スマホが鳴る。
貰う?と写真付きのメッセージが届いていた。別に食べたいわけでもないけど彼女に会う都合のいい理由を与えられたのだからありがたく頂こうと、二つ返事で取りに行くと返した。
はい。と、玄関先で手渡された赤いそれをじっと見つめる。そういえばなんでりんご?なんてその手の持ち主を見る。疑問に思ったことが伝わったのか「パイでも作ろうかと思って買ったんだけど余ったから」なんて返ってくる。どうせなら作ったパイの方が欲しいんだけど…なんて。
「アップルパイ、もうないの?」
「あるけど、そっちがいい?」
「そりゃ…うん」
「好きだっけ?」
「あんまり食べる機会ないけど…好きだよ」
「焼き上がるまでまだ時間あるんだけど、あとで声かけようか?」
「あ〜えっと…いや、一緒に待ってていい?」
迷惑かな、と思ったが特に嫌な顔もされずに「じゃあ、中に入って」と促される。
しっかりと余り物のりんごは手に持たされてしまった。
玄関が開いた時から香っていたリンゴを炒めたのだろう残り香が食欲を刺激する。彼女がお菓子作りをするなんて、思ってなかったな。意外な面を知れたこともあるが、彼女の手作りのお菓子が食べられるんだと胸が躍る。
「アップルパイ好きなの?」
「うん、好き。なんか突然食べたくなってさあ〜、何を思い立ったか作ろうなんて気分になっちゃって」
「へぇ〜、器用なんだね」
「器用貧乏っていうんだよ。」
他愛のない会話をしながらTVを見たり時間を過ごす。
しばらくして焼き上がりの近いだろうと思われる香ばしさと甘い香りが部屋にこもり始める。こりゃ、外にも匂い出てそうだな…と、困ったように笑う。
「みんな呼ぶ?」
「ん〜、いや。知らんふりしとこ。食いたかったらくるだろ」
そう笑った立木くんに、なんとなくうれしくなる。
部屋に立ち込める香りをお腹いっぱいに吸い込んで、楽しみだなと笑えば、お手柔らかにと立木くんも笑った。
終
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