「あの、育成ゲームのキャラクターに俺の名前つけるのやめませんか?」
「どうして」
「どうしてって………」
呆れた眼差しを向けると、和香さんは可笑しそうに笑ってつい先日ゲームの中の俺が最終進化をしたとかどうとか話し始める。
何やら聞き覚えもないタイトルのゲームだが、育成ゲームの類らしい。和香さんがそういうのにハマるタイプだとは思っても見なかった。新しい面を見れたという点ではまあ良しとしよう。しかし、自分の名前をつけられたそれの成長を話す彼女の楽しそうな姿になんだかもやもやと、あまり良いとは言えない感情が湧く。
「和香さんって、そういうの好きでしたっけ」
「いや、ゲーム自体あまりしないんだが…なんかこいつが伏黒に似ていてついやりこんでしまって」
「いや、どうみても似てないでしょ…」
「そうか?」
「そうですよ」
とにかく不快なんでやめてください。
というと特に何でもないように、仕方ないと言ってゲームを閉じた。
名前を変える様子もゲームを消す様子もないので、恐らく俺の見えないところで楽しもうという考えだろう。
「…ちなみに、どこらへんが俺と似てたんですか」
「…言われてみると似てないな」
「はあ…?」
「ただなんとなく、君の名前をつけて楽しんでただけかもな」
「そうですか、楽しかったですか」
どうだろうな。と微笑まれる。
目を細めて笑う和香さんは綺麗だ。惚れた弱みなのかなんとなく逆らう気にはならない。和香さんも特に俺に害のあることをしてこないし安心感のようなものなんだろうか…。
「でもまあ、せっかくだし最後まで面倒見ようかな」
「ゲームですよ、やめちゃえば良いじゃないですか」
「やめて欲しいのか?」
「別に、強制はしません。」
「ならいいだろう」
また笑った和香さんがスマホを置いて立ち上がる。
飲み物を取りに行く姿を目で追い、なんとなく画面がつけたままのそれに目を向けると、俺の名前をつけられたそれが画面の中で自由に過ごしていた。
全然、全くこれっぽっちも似ているようには思えなかった。
終
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