最近眼鏡に変えてみた。
コンタクトに変える前に使ってた眼鏡、多少度が違うけれど、見えるんだからいいか、と言った感じで最近常に眼鏡を掛けている。
別にそんな変化を気にしてくれるような友人はいないし、私もそれほど人付き合いが上手くないので指摘されたところで気の利いた返事もできないだろう。
本当はコンタクトがいいけれど、買いに行くのが面倒だとか、そんなくだらない理由で今は切らしている。帰りにでも買いに行こうかと荷物をまとめながら家までの道を考える。
明日は休みだし、ついでにお菓子でも買ってDVDでも見ながら食べようかな、そういうだらしないことも偶になら許されるだろう。
教科書は持ち帰らないので鞄は軽い。
下駄箱から靴を取り出し上靴をしまったところで聞き覚えのある声に振り返った。
「和香、さん…?」
「伏黒くん…」
「今から帰りですか」
「え、あぁ。こんなところで会うなんて珍しいな」
「そうですね。帰りどこか行くんですか」
買い物に、と簡単に返事をする。
何も特別なことはしていないのに、家に帰る以外の選択肢を選んでいることをまるでわかっているようで変な感じだ。
ついていってもいいかと聞かれ、どうぞと答える。
横に並んだ彼との目線が少し前より高い。
「背、伸びたな」
「まあ…はい。和香さんも目悪くなったんですか」
「目?」
それ。と顔に指を向けられる。
目が悪いのは昔からだと伝えると、知らなかったと少し拗ねたような声が返ってきて首をかしげた。
何か不満だっただろうか。
「じゃあ、買い物ってコンタクトですか」
「そうなるな。何か不満か?」
「いえ、目が悪いってこと知らなかったなと思っただけです。」
あぁ。なるほど。
私のことは何でも知っていると思ってたわけか。
ここ最近はここらの不良を締めていると聞いていたのに、まだまだ可愛いところもあったものだ。
「何か、失礼なこと考えてません?」
「いや、まだ可愛いところもあるなと」
「それですよ、まさに」
「拗ねたのか?」
「拗ねてません。それより、眼鏡。それ度合ってないんじゃないですか」
どうせ、昔の眼鏡引っ張り出したんでしょう。と、的確な推測に驚く。伏黒は人のことをよく見ている。些細な変化によく気づくから、こうして驚かせることも多々ある。
「正解だ。伏黒はよく人のことをよく見てるな。」
「…あなただからですよ」
「なんて?」
「いいえ、何も。」
「そういえば伏黒くんも何か買い物なのか?」
「え、いや別に。」
「そう」
「付き合ってもいっすか…その、買い物」
「え、あぁ…問題ないけど」
そう答えると、じゃあ俺も荷物持ってくるんで待ってて下さい。と踵を返す。
靴を履いて爪先を鳴らす。他に買うものはなかったかとスマホのメモを確認している間に戻ってきた伏黒くんと並んで歩く。
「買い物の後、時間ありますか」
「…あぁ、問題ないよ」
先ほど考えていた予定がふとよぎったものの頷く。
この時はまだ、買い物も終わり日も暮れる頃彼の想いを告げられるなど思いもしなかったのだ。
終
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