生き様に後悔だけはしたくない。
虎杖が歩む道を決めた言葉だ。もう何度聞いたかも覚えてない。
何度も何度も何度も、何度も…耳にした。
後悔をしない生き様なんて、ないのに。
屋上のフェンスに体を預ける。
だる、めんどくさ、態度は言葉になる。
高所から呪霊の様子を窺う、いまはまだ動きがないようだ。
「後悔か…」
「隼人なんか後悔してんの?」
背後からの声。虎杖の声は、よく耳に馴染む、雑音が酷くても自然と耳に入ってくる。いや、頭が虎杖の声を優先的に拾おうとする。何も取りこぼさないように、今度こそ失敗しないように。
振り向くことはせず会話を続ける。
「そりゃ」
「へぇー意外!俺、隼人は自分の選ぶことには後悔も何もない!って感じかと思ってた」
「どこをどう見たらそんな自信家に見えんの」
「や、なんか…いつも堂々としてるというか淡々としてるというか…?」
首を捻る虎杖の頭上にクエスチョンマークが浮いているように見える。
「人はさ、後悔を抱えて生きてんだよ。どんな奴でもなにか後ろめたさや罪悪感、憎しみ悔しさ悲しみ後悔の荒波の中で生きてる」
「じゃあ、さ…俺も、後悔する日が来るのかな」
「…」
「いや!後悔しそうとかじゃなくて、なんか、俺が選んだ道って正しかったのかなって時々不安になるというか…っ」
乾いた笑いが聞こえる。
「必ず来る、お前は必ず後悔する。」
「…うわぁ、はっきり言うじゃん…」
「ガキの選ぶ道なんか後悔だらけだろ。
大人でも後悔だらけで生きてんだ、正しい道なんかない、選んだ道を少しでも正解に近づけるんだよ。」
「正解に近づける…」
「人はどの選択をしても後悔する生き物だ。でも、後悔だけじゃない」
「?」
「お前は自分が選んだ道を必ず後悔する、だからそれまでに過ごした時間で何か1つでも誇れるものを見つけとけ。それはお前の支えになるし、正しさへの道標になる」
「隼人、ってさ…」
「なんだよ」
「かっこいいよな…」
「はあ?」
「なんというか、ミステリアス?」
意味わからん。という返事と共に校内に戻る扉へと向かう。
そろそろ時間だろ、行くぞと声をかければ駆け足が聞こえて隣に並んだ。
「後悔か…やっぱりするのかな」
「するつってんだろ、何回言わせんだ」
「いたっ、だってさあ〜…」
「後悔はする、誰でも、俺でも。お前は特にな。」
ついてきていた足跡が止まる。
それに気づきながらも階段を降りる足は止めない。
おおかた宿儺のことでも考えてるんだろう。
人は後悔する生き物である。
悔いのない人生などあり得ない。
人は必ず生きていく上で、迫られる選択肢の中で、己が選んだ道に大なり小なり後悔をする。
「いいから、いまは任務だ。行くぞ」
終
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