対の在り方 - 01. あなたと生きていたい

あなたと生きていたい



「悟、悟はいつか僕を手放すかな」
「紀之加?」

任務終わり、不意に聞こえた小さな音が風に攫われるように流れていった。
弱々しいその音はこの時に限ってはっきりと耳に入ってきた。聞こえてしまって良かったのか、分からなくて誤魔化すように名前を呼んだりして…。らしくない。

「お腹すいた、って、言った」
「確かに、僕もお腹減ったなあ〜。
帰りになにか食べよっか〜、紀之加何食べたい?」
「マック」
「ええ、僕の奢りだよ?いいの?マックで」

新メニュー食べたいという言葉に、じゃあ行こっか。と歩き出す。僕が数歩進んでも動く気配のない紀之加に足を止めた。彼女の瞳は、犬の死体を捕らえて揺れている。
今回の任務で彼女の術式により犠牲になった命だ。

「悟もいつか、僕を捨てる日が来るかな」
「さっきと言ってること違くない?」
「お腹すいたのはほんとう」
「そっちじゃなくて、手放すかな〜とか言ってたやつ」
「聞こえてたんじゃん」

表情は変わらないのに、僕を捉える視線は酷く不満そうに見える。
まだ幼い彼女は感情の処理が下手くそだ。

「ど〜したのお。おセンチなの?」
「うん。」
「自棄に素直。なんなのさ。
僕は紀之加のこと捨てたりしないし、便利な道具とも思ってないよ。」
「…。」
「あのさ〜あ、僕はっきりいって紀之加のことだ〜い好きだから…ってなんで嫌そうな顔すんの!!」
「してない。」
「してた!!!悟見たモン!」
「きも」

なんでいつも何でもない顔してるのに、時々こうも弱くなるのかな。
ハグして、とお願いされて喜んでと抱きあげる
このまま帰っちゃお〜と冗談で歩き始めても意外にも嫌がられなかったからそのまま帰ることにした。
少し昔を、ぼんやり思い出したりして。

「僕は、」
「なあに、」
「悟と生きていたい。他は何もいらない。」
「…愛されてるな〜僕」
「うん、そうだよ。」


肩に顔を埋めてつぶやいた言葉に、何かを返すことはしなかった。まだ幼い少女が不器用にも生きることを選んでいることが嬉しくもあり、その理由が悲しくもある。
いつか本当の意味で、生きる道を選んで欲しいのに。あまり、その未来のイメージが浮かばない、

いつか手放してしまうかもしれないけど、その日が来ることを拒めるのなら、この子と一緒に生きていたいとか、思うのは僕が絆されてしまっているからなのか…。




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