『ここ数週間で自殺、自殺未遂が相次いでいます』
点けていたテレビからの音にスマホを覗いていた立木莉皇は顔を上げた。ニュースキャスターの紡ぐ言葉に耳を傾け、流れる映像に真剣な眼差しを向ける。
現在自身が追いかけている事件に関わりがあるように思えた立木は少しでも情報を得ようとしたが、特に実になるような収穫はなかった。
そもそも全国放送に乗せる情報なんてたかが知れている。
この件について調べるようになったきっかけは友人からの相談だった。
つい先日、旧友であるAから友人が自殺してしまったという相談を受けた立木は、仕事として正式に動けるよう手配するために必要な情報を集めていた。仕事として上に申請する方が何かと動きやすいからだ。金銭的にも。
気になる点はいくつかある。呪いが関わっていることには確信を得ていたが、その周辺の窓からの報告はひとつも上がっていないということが1つの気がかりだった。
果たしてニュースに取り上げられた事件が、件の話と繋がっているのかは定かではないが視野に入れておくことに越したことはない。
呪霊祓いの任務として認められればそれ相応の術師を充てることも可能だし、自分が補助監督として付ければ話も早い。立木はそう考えていた。
調べついた情報に目を通し、思案する。
今のままでは情報が少なすぎる…京子から直接話を聞く予定も立てなければならない。それに関しては向こうの都合に合わせることになっているため連絡待ちで立ち往生を食らっている状況だ。
そろそろ連絡が来てもいい頃だが………。
そう思いスマホに目を向けた矢先
♪〜
まるでタイミングを見計らっていたかのようにスマホの画面に灯が点る。
**********
「私に死ねって言ってるわけですか」
「んー、まあ〜あながち間違ってはないけど。対応出来そうなのって君くらいだしね。ていうか、死なないし?」
目の前の男、五条悟はあっけらかんと愉快そうに言葉を返す。
Aからの連絡と思い手を伸ばしたそれに表示されていた名前に、立木は戸惑った。嫌な予感。面倒くさいことを押しつけられるんだろうと、容易に想像がつく。身体は拒否をしているが思考は至って正常なため、手の中で小刻みに震えるそれに悪あがきで少し間をおいて、通話ボタンを押したのはつい数刻前の話だ。
電話越しに彼、五条悟の声を聞いた瞬間、やはり後悔をした。
立木莉皇は補助監督志望だ。また五条悟とは親しい部類の関係にあるため、伊地知程ではないが理不尽な要求を受けることは少なくない。呪術師としても十分な実力の持ち主である立木はそれなりに呪霊祓いの仕事もこなしている。所謂便利な立場にあるため、簡単な任務であれば一人でやれと押し付けられることも多々あるのだ。なんせ呪霊祓いも書類諸々も一人で処理できるからだ。
今回の件は補助監督として付き、適性のある呪術師の派遣を要請するつもりでいた立木は、呼び出し主である五条悟の持ちかけた内容に顔を顰めた。
五条の言う通り、確かに立木は自身にかけられた呪いのせいで簡単には死ねない。だからといって他人にそれを利用されるのはなんだか癪なのだ。
「ま、たしかに、先生の言う方が確実かもしれないし被害も少ないです…。でも、私より上の階級の術師にお願いする方が良いと思ってマシタ。」
「自信ない?」
「この手のパターンは経験ないし窓からの話もないから前情報も少ない。経験の浅い私より…」
「だ〜いじょうぶ、莉皇なら"ギリギリ対処できる"からお願いしてるんじゃなくて、莉皇なら"できる"からお願いしてんの。」
「…」
「ま、あんまり深く考えないでさ!美味しいもの奢ってあげるし」
「美味しいったって…どうせならもっと良いもん奢ってくださいよ。こっちは命掛けるんですよ。」
「でも莉皇はそういうのよりこっちのが好きでしょ。ちゃあんと下調べしてんだから、伊地知が」
語尾にハートのついたような喋り方に立木は正直ドン引いて、伊地知を哀れんだ。忙しいだろうにこんな男のために私の好み事情を調べさせられたのか…。思えば数日前に何故か伊地知から仕事とは別に連絡が入っていたのを思い出す。
「くだらんことで伊地知さん使わないでくださいよ」
「くだらなくないよ〜、立派な仕事の依頼だからね。これは。」
「伊地知さんを使うのが?私に飯を奢るのが?」
「どっちも」
メニューを手渡されて受け取った立木はざっと目を通して伊地知さんの店のチョイスの良さに舌を巻いた。もちろんメニューは立木好みではあるが、カフェにしてはなかなかの値段である。後で伊地知さんにお礼を伝えようと決め、値段の良いものを数点選びメニューを閉じた。
「莉皇にとっては好都合な展開でしょ」
「…そうですけど」
「どこまで調べられた?」
「未遂の人たちにもコンタクトを取って顔合わせの都合を合わせてるところです。」
「ふぅん、それも好都合だね。
ま、書類とかそこら辺は他の補助監督つけるからさ」
「え、つけてくれるんだ」
「え、1人でやる?」
「…………」
「はは、優しいねえ莉皇は」
「書類を片してくれるだけでありがたい…。あと、もし必要だと思ったらもう一人術師を呼びたいですね。」
「うん、そこの采配は任せるよ。」
「自由にしていいってことですか。」
「そゆこと。その代わりちゃあんと祓ってね」
私の要望に五条悟の口角が上がる。話が早いのは助かるが…面倒ごとなのは変わりない。あと純粋にムカつく。
「軽いんだよなあ…」
「信頼してるんだよ」
都合の良い言葉だな。と思いながら首を縦に振る。その後は食事を終え、先生の持っている情報をもらってそのまま家に帰った。タイミングもよく京子からの連絡も入って予定は取り付けた。
続
コメント 0件
コメントを書く