みんなと一緒にいるのが好きだ。今まで碌に友達は居なかったし人との関わりを避けてきたから、心置きなく一緒に居られるみんなとの時間は僕にとってかけがえの無い時間だ。できるならずっと一緒に居たいし思い出は重ねていきたい。今までの分を取り返すくらい楽しいこともたくさんしたい。そんな風に思いながら過ごしていた。
そんな中で、立木くんとは人一倍同じ時間を過ごしていると思う。補助監督志望の彼女とペアで仕事につくことは多いし、呪術師としてのポテンシャルも高い彼女はまだまだ未熟な僕のサポートの位置に置かれている。でも補助監督の仕事も呪術師の仕事もこなしている上に僕のお守りもなんて…頭が上がらない。感謝の念でいっぱいだ…。
ガラ…
教室の戸を開ける。それなりに広い教室に並べられたたった五つの机と椅子。先にいたパンダくんや棘くん、真希さんにおはようと挨拶をして自分の席に向かう。
「よお、この前の仕事どうだった?」
「真希さん…はは…また立木くんにおんぶに抱っこだったよ…」
任務の事情を知っている真希さんに声をかけられる。数度めの仕事をつい数日前に立木くんと一緒に行ったのだ。
修行の成果を!と意気込んだもののやっぱり上手くいかずにてんやわんやしていたのが本当に情けない。
「まあ、お前みたいなひょろっちいのが急に強くなれるわけないだろ」
「手厳しい…」
まだ経験値の浅い僕はなにかと立木くんの手を借りている状況で、なかなか立木くんから巣立ちができないでいる。早く隣に、願わくば彼女を守れるくらいに強くなりたいのに、なかなか上手くはいかない。更に呪いのせいで死なないのだと言う彼女は良く僕を庇って何度も死んでは蘇っている。
「まずは、とにかく身体作りだな」
「うん…」
「体幹もいいんだから、あとは時間の問題だろしょげんなよ」
「だといいけど…」
「お、ほれ、噂をすればだ」
真希さんの言葉に顔をあげれば、教室に入ってくる立木くんが「おはよ〜」と大きなあくびをしながら席につく。
「お、おはよう立木くん」
「おはよ〜お二人さん、朝から仲良しだね」
「はよ」
聞いてくれ〜と項垂れる立木くんの口から漏れるのは補助監督の仕事の話だ。書類がどうこういつも嘆いているけど難しい話で頭には入ってきてない。
「あ、乙骨くん怪我どう?」
「うん、全然平気だよありがとう。立木くんは?その…腕…」
「腕?」
「そうそう、この前腕もがれちゃってさあ」
軽い口調で出てきた衝撃事実に真希さんが声を上げて目を丸くする。僕も僕で不甲斐なさでつい視線を下げてしまう。
「ピンピンしてんじゃん」
「まあ、そういう身体なもんで….」
「そういったってよ…無茶すんなよ…」
「しないさ、必要がないならなあ」
つまり、必要ならやるということだよね…。と返すと、まあね。とあっさり肯定されてしまう。
正直彼女が傷つくたびに気が気でない。彼女が目の前で何度も死ぬのを見るのは苦しくて悲しくて悔しい。だから早く、強くなりたいと思うわけだけど…。
「少なくとも、僕といる時はそんなことにならないように強くなるよ」
「へぇ、言うじゃねえか憂太」
「えっ、あ!!別に変な意味じゃ…!」
「だったら私は、乙骨くん専属の補助監督になろかな〜」
「えっ」
「おかか〜」
「いや、無理だろ。人手不足の中で専属とかできるわけないって」
「パンダは現実みすぎで面白くないな、言うだけならただだしいいじゃん。特級の特権で専属の補助監督。」
立木くんとみんながわいわいと話に花を咲かせる。僕はまだうまくそこに入り込めなくて少し寂しくなる。さっきまで僕と話してたのにな。なんて…
ちょんちょん、と肩を叩かれて振り向くとにやついたパンダくん。
「憂太、気づいてないかもだから教えてやるよ」
「?」
「莉皇のこと見過ぎ」
「……………!?!?!?」
「気をつけろよ、手強いぞあいつは」
「そんなっちがっ………えっ………え!?」
「なんだ、やっぱり気づいてなかったんだな」
「〜〜〜〜〜っ」
「青いなあ」
新しいおもちゃを見つけたと言わんばかりの笑顔に返す言葉もない。ここ最近の自分の行動や思考を思い出して余計に熱がこもる。
立木くんに見てもらいたいってのは、こう先輩に対しての気持ちみたいなあれで…!強くなりたいってのも迷惑かけたくないだけで…!守りたいってのも…恩があるからで…!たぶんちょっと寂しいって感じるのだって…!友達だから一緒にいたいって…思ってる、だけで…!
「え…っ…………えっ?」
「認めようと認めまいと事実は変わらんからな」
「ちがっ」
「気づいてないのは本人からだけだぜ、ま、がんばれよ」
「パンダくっ」
「しゃけしゃけ」
えぇぇぇ………うそぉ………。
その後数日なんだか緊張して立木くんとまともに会話もできなければ目を合わせることもできなかった…。
終
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