※S7新スキンについての小話
「"レジェンド・オクタン、新スキンでヘアスタイルを披露!"だってさ」
端末に表示された情報サイトの見出しを読み上げれば、件の彼はゲームのモニターに目を向けたまま「おー」と間延びした返事をする。
来たる次シーズンに向け、先日公開されたトレーラーの反響は凄まじいようだ。新マップや新たに加わるレジェンドなど話題は尽きないが、一部ファンの間では彼の髪型についての話で盛り上がっていたらしい。
「へえ、青髪似合ってるね。初めて見た」
タップしたページを開けば詳細な画像がいくつか載せられているようだった。今までとはテイストの違ったスキンに対する純粋な感想や、ヘアスタイルお披露目に衝撃を受けた旨のコメントなど、好感的な反応が多く見受けられる。
そう言えば彼が公に頭部を露出するのは初めてなのだなとそこで思い至るが、見慣れている身としては、いつもと異なるヘアカラーにばかり目が行ってしまうのが正直なところだった。
「初めてって……写真送っただろ?」
「そうだっけ? あー……言われてみれば」
「オマエほんっと俺からの連絡、チェックしねえよなあ」
確かに私は筆不精……メッセージ不精? のきらいがあり、オクタビオにも散々言われてはいるが、今回ばかりはただの確認不足ではないと声高にして言いたい。
別件の仕事でアジャイと一緒にいる時に彼から自撮りが送られてきたものだから、一瞬確認してすぐに見るのをやめたのだ。……彼女のやたら暖かい目がいたたまれなくて。
「でも今の今まで忘れてたんだろ?」
「それは……ごめんね?」
「お前が本当に俺のこと好きなのか、たまに不安になるぜ」
俺様オクタン様らしからぬ言葉に思わず彼に目線を戻せば、ちょうどゲームを終了させたところのようだった。
2人がけのソファがぎしりと音を立てる。彼がこちら側に重心を傾けたのだと気づくのは、覆い被さられてからのことだった。手にしていた端末を奪われて、視線を無理矢理合わせるように仕向けられる。
「ま、お前が俺のことを好きだろうが好きじゃなかろうが、手放す気はねえけどな」
「……それは、逃げられそうにないね」
「逃がすかよ。どこまでも追いかけてやる」
軋むような音を立てているのはソファか力強く抱きしめられた体か。すりすりと首元へうずめられた頭を撫でる。傷めつけられてゴワついた髪の触り心地すら愛しく思えてくるのだから、私はちゃんと彼のことが好きなんだとしみじみ思う。
「青い髪のオクタビオもかっこいいけど、やっぱりこの色が一番好き」
「そんなんで誤魔化されるとでも?」
「嬉しいくせに」
返事の代わりに口づけがやって来て、まぶたを閉じる。
次のシーズンが始まるまで、あと数日。
(2020年11月2日 Pixiv掲載)
(2025年9月14日 加筆修正)
