人間でなければ何だというのか


 刀剣男士になった。ただそれだけのことだ。

 なんてことはない、いつもと同じようにおやすみと言いながら目を閉じて、開ければそうなっていただけのこと。身長は以前とほとんど同じで目立った差異は無いし、せいぜいすこし伸びた髪が気になるな、と思う程度だ。……ああ、あとは性別だろうか。ヒトであった頃には真っ先に気にしていただろうが、妖よりとはいえ神、性差などは特に気にすることではないと思うようになった。ついでに一気にヒトとしての感情が遠のいた。これも大したことではない。

 兄、とか、弟、とか。仲間は連帯すべきだとは思うし、主君には尽くすべきだとも思う。だけど、そこに戦に支障をきたすような情が必要だとはどうしても思えなかった。頭の中でリピートするだけなら簡単であるし、主君を不安定にさせてしまうのは本意ではないから、そういうときや困ったときはかつての記憶からその場にふさわしいと思った感情をコピーして表面に貼り付ける。我ながらポンコツだとは思うがこれでもかつては主君と同じヒト、仲間の誰よりもかの人の精神の安定に一役買っている自負はある。