分かっていなかった2回目


気がついたら、俺は中学校の入学式の日まで遡っていた。

あのカラスが言っていた事がようやくわかった。

つまり、ここでなら先輩が死なない。

いや、死なないように俺が変えてみせる。

5年後の2月25日。先輩が死んだ日。

絶対に死なせない、そう意気込んだものの、俺は何をすればいいのかわからなかった。

何もわからないまま、前回と同じように過ごした。

先輩は相変わらず先輩だった。

こんな俺に目をかけてくれて、ちょっとイタズラ好きなところもあるけど、本当に良い先輩だ。

この人は事故なんかで死んでいい存在じゃない。





未来を変えるために、進学先を先輩と同じ桐皇学園にしてみた。

高校でも先輩は変わらず接してくれた。

進級すれば、前回先輩が言っていた手のかかる後輩が同じ部活に入ってきた。

確かに手のかかる後輩だ。サボるし、馬鹿だし、部活内の人間関係はあまり良くない。けれど、圧倒的に強く、居るだけで勝てると安心する。

喧嘩してばかりな部活だったけど、それはそれで楽しかった。





忘れていたわけじゃない。

ただ、今までとは全然違う道を選んでいるから、もう大丈夫だろうと油断していたんだ。

2月25日、今度は別の場所で先輩が死んだ。

やっぱり事故だった。

未来は、変えられなかった。





そして先輩の葬式の後。俺の家の前にカラスがいた。


「残念だったね」


そいつは愉快そうな声で言った。


「ふざけるな」

「嫌だなぁ。チャンスを無駄にしたのはキミじゃないか」

「だって……」

「少し、自分の行動を変えるだけで未来が変わると思った?少し場所をずらしただけで未来が変わると思った?少し一緒にいる人物を変えるだけで未来が変わると思った?」


その通りだ。

俺はそう思っていた。


「そんなわけないじゃないか。運命はそんなに簡単に変わらないよ」

「俺はどうしたらいいんだ」

「さぁ?もう一回戻る?」

「……戻る」


過去を変えるにはそうするしかなかった。


「じゃあね」


そして俺は意識を失った。