中間テスト

フランは授業をサボる。でも、それは毎回じゃない。なぜなら、毎回サボると殺せんせーが煩いし、監察任務も出来ないからだ。

まぁつまり何が言いたいかというと……


「さて、始めましょうか」


たまたまフランがサボらなかった授業が、なんだかめんどくさい授業になった、ということだ。


「学校の中間テストが迫って来ました」「そうそう」「そんなわけでこの時間は」「高速強化テスト勉強をおこないます」


分身した殺せんせーが次々と言葉を重ねる。フランはサボれば良かったと後悔した。


「先生の分身が1人ずつマンツーマンで」「それぞれの苦手科目を徹底して復習します」


いちいちハイスペックな組織(ヴァリアー)に属しているフランには苦手科目などない。いや、実際には勉強は師事していた骸やクロームに教えて貰ったのだが、まぁそんな細かいところはいいだろう。

とりあえずそんな感じで苦手科目のないフラン。中学で学ぶ内容なんて全部余裕で解ける。でも、真面目に授業やテストを受けないので、殺せんせーはフランの実力がどんなもんか測りかねており、結果としてフランの前に立った分身殺せんせーのハチマキは、ただ真っ白なハチマキになった。


「なんでミーは真っ白なんですかー?」

「フラン君はテスト結果を見てもどれが苦手でどれが得意なのかわからないのですよ。とりあえずこのプリントをやってみて下さい」


そう言って殺せんせーが渡したのは、国社数理英の5教科それぞれのプリント(A4サイズ)5枚だった。内容はテスト範囲の問題がランダムで配置されている。

それはそれはとてもめんどくさいとフランは思った。けれど目の前の殺せんせーガン無視して適当にやる方がめんどくさくなると考えたフランは、渋々とプリントを解き始めた。

何回も繰り返すが、フランに苦手科目はない。そして、中学の内容なんて余裕だ。フランはそのプリントを1枚5分で終わらし、すぐに殺せんせーに返した。


「タコせんせー、終わりましたよー」

「おや、随分と早いですね。早速採点いたします」


殺せんせーはマッハで採点を終わらした。


「フラン君!!すごいです!!満点ですよ!!」

「わー、やったー。ミーはこれでテスト問題ないですねー。てことで帰りまーす」

「ちょ、ちょっと待って下さい!もう少し先の範囲もやりませんか?フラン君ならいけます!」

「それー、次のテストに必要ですかー?」

「ないですけど、せっかくなんでやりませしょう!」

「ないならやりませーん」


そしてフランは引き止める殺せんせーを無視し、サボりに出るのだった。テスト範囲はちゃんと出来ているので、殺せんせーも強く引き止められなかったのだ。

それからのこと、フランが強化テスト勉強の授業に出ることはなかった。


時間は流れ、テスト当日


フランは真面目にテストを受ける気はなかった。点数を全部ゾロ目で揃えようとか、わざと名前しか書かないでテストを出そうだとか考えていたのだ。でも、範囲が大幅に変わっているテストを見て、考えが変わった。


(よし、全部100点取ってやりましょー)


明らかに変わったテスト範囲。当然のようにそれはE組に伝えられてない。こんな事が出来るのは理事長しかいなくて、理事長はE組に良い点を取って欲しくないのだろうと簡単に予測が立った。そしてその理事長の企みを完全に防ぎ、一位を取るのは面白そうだと思ったのだ。

E組に良い点を取らせないように作ったテストで、E組が1位を取る、なんて愉快なことはなかなかない。フランの性格は相も変わらず歪んでいた。


(プライド高い人ほど、思い通りにならない事があるとすぐに怒って面白いことになりますからねー)


そうしてフランは意気揚々とテストの問題を解き始めたのだった。


テスト返却日


当たり前のようにフランは全教科100点を取っていた。つまりどの教科でも一位で、総合でも一位だ。

殺せんせーが落ち込んで、それをカルマ君が励まし、殺せんせーがリベンジに燃え、クラス中が笑いに包まれていても、フランは


(総合1位取ったのは良いですけど、肝心の理事長の態度を見れないのは考えてませんでしたー)


クラスの雰囲気なんて関係なく、そんなことを考えていた。

本当にフランがクラスに馴染む気があるのか、甚だ疑問である。

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