ベノム
私は彼から逃げ出せない。
彼から貰った愛は他の誰からも貰えて無かった愛が彼からは貰えるから私は逃げ出せないんだ。

「痛いの…痛いの…だからやめてよ」
「やめて良いんか。お前が欲しいのはこれじゃないんか。」

左頬に痛みを感じる。きっとこれは愛なんだなと思ってしまうから彼からは逃げられない。

「…う…ん。」
「どっちなんや。応えてや。」
「く…だ…さ…」

バシーんと頬の痛みと共に頬にまた痛みがやって来てはひんやりとした何かを感じ取れる。自分の視界には茶色の物が視界に映る。
数秒後にじんわりと痛みが広がっていくがやはり、殴られた頬だけで一番痛い。そんな事はわかっているし殴られのなんて嫌いだけどもトントンから殴られることも首を絞められても苦痛なんて感じられなかった。

「なぁ、応えてくれよ。なんて言いたかったんや。ちゃんと応えてよな」
「ごめんなさい。」
「なんで謝ってるんや」

私の頭に手を置きながら髪をワシャワシャと優しく撫でてくれる。優しくされてしまうと心が満たされてしまう。殴られて痛みを感じていても嫌いなんて思わない。
痣や傷は彼の愛の証なんて思ってしまう。多分、他の男の人に同じ事をされてもきっと愛を感じられない。トントンがしてくれるからこそ愛を感じるのだろう。

「ごめんなさい。ごめんなさい。」

自分の口から謝ることしかできない。トントンに嫌われることが一番嫌である。だから嫌われないためになんて応えればいいのか頭をグルグル回転させるけどもやはり謝ることしか浮かばない。

「謝らなくてええんやでやりすぎたから」

先程とは全くの別な優しい顔をしてくれている。心配そうな顔して何処かに立ち去ってしまう。私はトントンがいなくなったことを確認して救急箱取り出して湿布や包帯を傷ついた場所に手当てをしている。

やはり、利き手に包帯を巻くのは難しい。丁寧に巻けなくてぐちゃぐちゃになってしまうためにい何度も何度も巻き直していても綺麗には巻けない。だけども傷を隠さないといけないんだ。

「私は愛がもっと欲しいから。」

そんなことを呟くが彼には届かないのだろう。届かなくてもトントンが私だけにこう言うことをして私を愛して入れたらそれだけで満足である。

なんて思っているといきなり背中が重くなり肩から誰かの手が伸びてくる。

「包帯、巻こうか」

いつのまにかトントンが帰ってきたのに気付いてなかった。

「いいよ。自分で巻けるから」
「はぁ、俺の言うこと聞けへんの」

先程とは全くの違う声。ドス黒く怒っているような何かトントンを怒らせてしまったのだろう。

「あっ、いや。」
「だから、俺の言うこと聞けへんのかって聞いてるんやけど」
「うんうん。聞けるよ」

頷いて巻けなくて困っていた方の腕を差し出して包帯を渡すと優しく包帯を巻いてくれる。

「傷、増えたな。」
「うん、そうだね」

巻いてくれた腕を引っ張って自分の口元まで持っていく。数秒したらチクリ痛みがやってくる。血がジワリと出てくる。他のところにも吸い付くように何箇所にも何箇所にもキスを落としていく。

「変な虫はつかないやろ。」

優しく頬んでくれる。

「俺は、もっと愛をあげるからな」
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