涙の理由
全ての出会いには、意味があるらしい。
袖振り合うも多生の縁、なんて言葉を思い浮かべながら、真琴はある公園で足を止めた。
全ての出会いに意味があるとするならば、この出会いにも、意味は存在しているのだろうか。
抜けるように澄んだ雲ひとつない青空を背負って、雫を零し続ける見習いと、幸か不幸かこの場で出会ってしまったことにも。
泣いている、というには、あまりに寂しいものだった。
引き結ばれた唇からは一切の音が漏れなかったし、涙をぽろぽろと落とし続けるその瞳からも、何があったかは読み取れない。
知らないふりをして、足早に遠ざかってしまえたら良かった。
赤の他人を装って立ち去っていれば、きっと次にエデンで顔を合わせた時も、何食わぬ顔をして、他愛ない話が出来る。
そう、分かっていたのに。
「……どうしたんですか、見習いさん」
放っておけなかったことに、大した理由は無い。
強いて言うなら、見て見ぬふりを貫き通せるほど、真琴が大人になれなかっただけ、だろうか。
「っあ、真琴さん」
頬に涙の線を残して、見習いが勢い良く顔を上げた。
その目元は、痛々しいくらいに真っ赤になっていた。
「大丈夫です、大丈夫なんですよ」
へらりと笑う見習いは、まるで自分に言い聞かせるように繰り返す。
まだ潤んでいる双眸も、腫れぼったい瞼も、太陽に照らされてきらきら輝く乾き切っていない涙の跡も、大丈夫とはかけ離れた姿であるというのに。
こんな痛々しい姿を、人は見て見ぬふりなど出来るのだろうか。
知らないふりが上手くなった、いわゆる大人と呼ばれる人達なら、きっと出来てしまうのだろう。
見なかったこととして片付けて歩き去り、やがて記憶からも消してしまえるのかもしれない。
ならば真琴は、今だけでも大人ではない存在でも構わないと思えた。
こんな苦しそうな見習いに、手を差し伸べてやることが出来るのなら、それで良い。
「……僕で良かったら、話だけでも聞きますよ」
真琴は、手を差し出す。
おずおずと重ねられた見習いの手を、離さないように固く繋いだ。
涙の理由となった見習いのその傷を、多少なりとも癒す為に。
真琴は、思考を巡らせ始めた。