部屋から出られないんですけど(前)

「……え、ここどこ?」

今日は定休日なので暇していたところに、哀牙さんから紅茶の葉を事務所に持ってきて欲しいと連絡が入った。
正直面倒だったがお店の売上にもなるし、予定が無く暇だった為、承諾。
紅茶の葉を持ち事務所に向かったが、頼み事をした本人は居らず鍵は開いている状態だった。
鍵が開いているならすぐに戻ってくるだろうと思い、ソファに座り待っていたが、前日夜更かししていた私はつい寝てしまった。

目を覚ますと、私はベッドにいた。全く見た事ない部屋、私がいるベッドとテーブル席に哀牙さんが紅茶を飲みながら座っていた。

「あいや!龍殿、やっと起きましたか!」
「え?哀牙さん?えっと、ここは?」
「気付けば我もここに居りましたぞ」
「という事は、哀牙さんも連れ込まれたと……とにかく、警察に電話を」
私は持っていたスマホを探したが見つからず。
「いやいやいや、そんなことは」
そのまま扉に向かい、開けてみようと試すが開かず。
「と、閉じ込められてるぅぅぅうう!!!なんで!!!」
慌てふためく私を、哀牙さんは紅茶を飲みながら楽しそうに見ている。

「なんでそんなに落ち着いてるんですか!」

調子が狂い始めている私は声を荒らげる。

「さよう!この部屋にはトリィクがございまぁす!」

ビシッ!という効果音がつきそうなポーズを取り始める哀牙さん。指差す方向を見ると。

「せ、『セックスしないと出れない部屋』!?」
「この部屋を調査し色々試しましたが、あとは1つだけ」

ツカツカと私のそばに来る哀牙さん。
ジリジリと下がる私。

「ま、まさか」

哀牙さんに軽く肩を押され、ベッドに倒れ込む。びっくりして動けない私をよそに、手際よく胸のリボンを解き、上着を脱ぐ哀牙さん。

「この哀牙に付き合って頂きますぞよ、龍殿」


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