2「オレに、人を殺す方法を教えてくれ」 リゾットが最初に考えたのはプロに弟子入りすることだった。彼が生まれ育った町はイタリア南部でも治安が悪く、プロの殺し屋やギャングが酒場に入り浸っている。 その中でも有名な殺し屋で、一般人も顔を知っているのがマリア・スミス。 純粋なイタリア人ではないらしいが、『パッショーネ』の傘下にいる凄腕の殺し屋だ。 リゾットはそのマリアがいつもいる酒場に連日通い、弟子にしてくれと頼み込んだ。 彼の必死の訴えを聞いても、マリアは冷ややかだった。 「なに寝言いってんだよ坊や。眠いなら早くマンマのところに帰りな」 周囲に嘲りの声が満ちる。顔が赤くなって思わず俯いてしまっても、リゾットは諦めなかった。 眠っても赤い海を思い出してすぐに目が覚めてしまう。 すぐに出てくる犯人をどうにかしなければ、きっと自分は一生この悪夢に悩まされるのだ。 「マリア、オレに人を殺す方法を教えてくれ」 「バカ言うんじゃないよ。アンタの理由は聞いたけど、そんな理由で一生棒に振るつもりかい?」 「そんな理由じゃない! バカじゃない! オレは本気だ!」 「人殺しなんて他に能の無いバカが落ちぶれてやるもんさ。アンタは他にやれることがあるだろ!」 とうとう殺し屋に怒鳴り散らされても、少年は必死に彼女のあとをついて回った。 彼女は元々優しい人間なのだ。そうでなければまとわりついてくる子供など痛めつけて追い払うか、捨て駒にして終わりだ。 「あいつの死んだ時のことをずっと夢に見るんだ。犯人をどうにかしてやらないと、オレはずっとあいつの死体を夢に見る」 「生憎だが、犯人を殺したって夢にでてくるのがアンタのいとこから犯人の死体に変わるだけさ」 「そうしたら、夢の中で死体をバラバラにしてやる」 血の海をまだ覚えている。犯人をどうにかしてやりたいと、その時のリゾットは同じ事ばかり考えていた。 とうとうマリアが折れたのは、一年たった頃だ。 彼女が名を上げたいチンピラに狙われた時、偶然リゾットが助けた。おそらくそれが切っ掛けだ。 「……ここから先は地獄だよリゾット。それでも殺しの方法を知りたいのかい?」 そうしてリゾットは、マリア・スミスの指導の下殺し屋としての道を歩み始めた。 [しおりを挟む] 目次戻る |