平和に行きましょう。
喫茶店
タナカを見た人間は大抵三度ギョッとする。一度目は、日本人離れした体格に。二度目は、悪人もかくやという人相に。三度目は、顎から口元を縦断する傷跡に。
それは目の前に現れた女も例外ではなかった。
「僕を殺してくれないか?いい加減、動けない体で過ごすのも飽いてきてね」
男の声は、本来の口から発せられる声と同時に、皺が刻まれるかのように生まれた小さな亀裂からも同じ音を出していた。元々は端正だったのだろう顔の形が分かるだけに、その姿はあまりにも悲惨であった。
「こんな姿でも、あと100年か200年は生きれてしまう。あの子は僕を、このまま自然に死ぬまで見届けるつもりで殺してもくれない。だから、殺しに躊躇の無さそうな君に頼みたいんだよ」
「お断りデス。貴方の現実ですし、彼女の問題だ。それに殺してもしうっかり彼女が後追いでもしたら、誰が私の手紙を届けてくれるんデスカ」
「神父とは思えない断り方だ」
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