平和に行きましょう。

さらさん


兎山 沙良
津野山村虐殺事件、唯一の生存者。
既に40代後半であるはずだがその見た目は未だ20代半ばのように若く美しい。若作りや化粧などではなく、肉体的に全く老いていない不可思議な見た目をしている
ツァトゥグと接触し魔術を授かった魔術師。既にその正気は半分以上削がれ、目には狂気もちらついている。「自己保護の創造」により加齢を緩やかにし、また肉体的装甲も得ている。その他魔道書の劣化写本を所持している
とても美しい容貌の女性で、人当たりも穏やかかつ上品。けれど深く関われば人を人と思わない残虐な本性を目の当たりにすることになる。

津野山村虐殺事件
30年前に起こった、村民の体の一部とぶちまけられた血液以外、近くの神域とされていた山さえ一夜にして消えた不可解な事件。
状況証拠や残穢から、神に類する特級呪霊による仕業とされているが、何故一介の女子高生がほぼ無傷で生き残ったのかは謎。唯一の生存者となったその女子高生は事件から3年後行方不明となった



「あの頃の事はあんまり、思い出したくないんです。だって、何があったかなんてご存知でしょう」
 艷めいてさえいる睫毛に縁取られた青い瞳が潤み、伏せられる。わざとらしくもある仕草だが、言葉の説得力はあった。
 30年前のその事件は、未だ尚ネットでも探せばすぐに見つかる有名な怪奇事件だ。異常な殺人の手口、凄惨な現場、そして何より村民及び旅行者合わせ500名以上が一夜にして惨殺されたという規模の広さ。近くにあった霊山も同時刻に消失したとされているが、殺人事件と山の消失の関連性等は結び付けられず、それらは別々の2つの事件と考えられている……一般的には。
 呪術側から見れば、その2点は繋がっていた。ざっくり言ってしまえば、霊山に封印されていた土地神が何らかの要因で解放されて、生贄を求めて村民と運悪く居合わせた修学旅行生らを喰ったという話だ。何故封印が解けたのかについては、肝心の山が形残さず消えたことから推察することも出来ない。知っている可能性があった生存者が、今目の前にいる女性だった。そのはずだった。
 女性は淑やかに微笑んでいた。ハリのある肌は白く、烏の濡れ羽色のような黒髪に縁取られた顔立ちは人間味がないくらい美しい。


 削がれた正気を元に戻す術など存在しない。
































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