携帯から見られない方がおられたので、こちらは画像なしになります。
※attention!!
みつ豆さまから強奪した揚げ出し豆腐小僧岩ちゃんのイラストより派生した話。
この話はみつ豆さまの描かれた揚げ出し豆腐小僧岩ちゃんと化け猫遊女岩ちゃんが同時に登場します。
揚げ出し豆腐小僧岩ちゃん→妖怪さん。笠をかぶっている。人間に揚げ出し豆腐を見せる。人間の及川とラブラブ。
便宜上、九尾及川と化け猫岩ちゃんは既に出来上がっています。
岩泉×岩泉、緊縛、百合表現あり。
執筆数時間クオリティ。
『』←揚げ出し岩ちゃん。
「」←化け猫岩ちゃん。
ご了承頂けた方のみ下へお進み下さい。
『那由多の断片』
「……おまえ、だれ?」
目の前の、紅い麻縄で縛められた小さな男を呆然と見つめる。部屋に入った刹那飛び出した耳も尻尾もしまう気になどならず。聞きたいことは山とあるのだけど、二の句が継げなかった。小さいとは言っても体躯は自分と大差なく、丁寧に編まれたであろう笠をかぶっている。食い込む縄が痛いのか顔をしかめながら、にいっと笑う及川へと吐き出すのは罵詈雑言。何という既視感。その姿は見たことがあるなんてものではない、己の日常そのままではないか。いつもは縛られてなどいないけれども。吐く言葉が同じだとか、そんな細かな話ではない。そう、目の前にいる小さな(黙れ、自分でもわかってる、くそが)男は、まるで生き写し、岩泉に瓜二つであったのだ。
ついとこちらに向けた目が見開かれ、彼もまた同じことを思ったみたいだった。見つめあったまま互いに固まる岩泉たち。それを明らかな愉悦をにじませた榛色が眺めている。
及川に面白いものが見られるからと、松川のところにいた自分が呼び戻されたのが少し前。盛り上がっていた話に水を差されて苛つきはしたけれど、ここで無視をするほうが後々余計に苛つく事態になることはわかりきっていた。何だよクソ川!すぱんと戸を開けてみれば、顔かたちそっくりで双子みたいな男の縛られた姿。それは尻尾も飛び出るだろう。
「お前を縛って遊ぼうと思ってたらさ、いきなり出てきたから、もうひとりの岩ちゃんが。上手く縛れてるでしょ?後でお前にもやったげるね」
煙管を咥え笑う及川に何から突っ込めばいいのだろうか。
「……い、わちゃんって、お前も岩ちゃんなのか?」
よくわからない質問だけれど、言っている本人が一番意味がわかっていないような気がする。
『……そうだけど』
ぱちぱち目をしばたたかせている「岩ちゃん」にそろりと近づけば、びくり、身体が強張るのがわかった。きっと縛り上げた及川のせいだ。このひとでなし。
「お前は妖怪?人間?俺は化け猫遊女」
二本の尻尾をゆらりと揺らす。それをじいっと見ていた「岩ちゃん」は、ふうっと息を吐き出した。
『妖怪。揚げ出し豆腐小僧』
聞いたことはないけれど、妖怪の種類は星の数ほどあるというから、まだ自分が出会えていなかっただけなのだろう。ぺたんと目の前に座ると、幾分ほっとしたみたいに猫目の眼光がやわらかくなった。
「可愛いねえ。岩ちゃんがふたりだなんて幸せすぎてたまらない」
「お前は黙ってろ、くそ。でさ、お前はどっから来たんだ?この近くにいるやつじゃないよな?」
前半は及川へ、後半は揚げ出しちゃん(及川命名)へ。棘が痛いんですけど?!九本もある尻尾をばさばさ揺らしながら喚く及川のことは、ひとまず無視をする。
『……わかんねえ。何かに引っかかって躓いて、置いてた揚げ出し豆腐に頭ぶつけたらここにいた』
「……大変だったんだな。怪我はしてねえ?」
『ん、豆腐だったから平気』
後ろでクソ狐が腹を抱えて笑っているけれど、まだ無視でいいだろう。それにしても豆腐。豆腐に頭をぶつけて、その拍子にどこか知らないところに飛ばされたということなのか。
「……どうやったら戻れるんだろうな」
『っ……おいかわ……』
「ん?!何だよ、お前のとこにも及川がいるのか。まさかそっちの及川もこんなに性格悪いとかないよな?」
自分が何人いたって別に構わないのだけど、及川が何人もいるのは想像すらしたくない。ひとりだけで手一杯。重すぎる執着と愛に、自分は応えることができているのだろうかと不意に思う。この揚げ出しちゃんもきっとあふれてこぼれて、したたるほどに愛されているに違いない。いま、ここにいる自分がそうなのだから。
『俺の及川は人間で、飯作る店やってる。性格は……悪くはねえ?……と思う。あいつの揚げ出し豆腐、すげえ美味いぞ』
多少の言い淀みと疑問符は気にしないことにする。それよりも。
「……エビも美味い?」
『お前エビ好きなのか?たぶん美味いと思う。不味いもん出されたことねえし』
少しだけこちらの海老と食べ比べをしてみたいと思ってしまったのは仕方がないことだ。だって、海老は美味い。
「なあに、岩ちゃんは美味しい海老さん食べさせてくれるなら誰でもいいの?」
聞こえた舌打ちにひくりと喉が引きつった。海老の話をしているのだから、突っかかるところが違うだろう。いちいち細かすぎるうえに小さすぎる。けれどそんなどうでもいいことで機嫌を損なわれるのは、面倒だし何より少しだけさみしい。及川に負けないほどに、自分も大概甘いのではないかと最近自覚した。させられた。
「そんなこと言ってねえだろ。お前ほんと馬鹿だな。ってか、早くこの変態じみた縄ほどいてやれよ。痛えよ……な、あ?!」
及川から戻した視線が固まる。揚げ出しちゃんを二度見してから。
麻縄というものは手入れをしてあっても、ぎちぎちに縛られると痛いのだ。それもかなり。食い込んで擦れて痺れて、痕だって残る。及川の縄ならば恐らく蝋で炙って油分も含ませてあるのだろうけれど。それでも毛羽立っていないだけましだという程度。痛いだとか苦しいだけならまだ堪えようもある。けれど困ったことにそれだけではなくて。身動きできない恥ずかしい姿に縛り上げられると、まるで抱かれているみたいに、ぎしりと軋む縄に酔ってしまったみたいに、ふわふわして感覚がおぼつかなくなる。とろりと猫目をうるませて、呼吸すら及川に明け渡す錯覚に陥るのだ。
『……っ、は…ぁ』
この揚げ出しちゃんも、「そう」なっているのだとすぐにわかった。以前無理矢理見せられた、姿見に映る自分の顔と同じだったから。どうしてだかぞわぞわと肌が粟立つ。
「縛られたときのこと思い出した?こんな顔までおんなじだ。あは、二人ともほんとに可愛い」
すっかりご機嫌になったらしい及川が音もなく近づいて、ふるふる震えている揚げ出しちゃんを膝に乗せた。動かす拍子に縄が擦れたのか、少し高くなった悲鳴みたいな声を上げる。
「俺が悪戯したら揚げ出しちゃんの及川さんがやきもちやいちゃうよね。俺とおんなじ思考だったら殺すかな、たぶん。だからさ、お前が揚げ出しちゃん気持ちよくしてあげなよ」
「……意味わかんねえ。縄ほどいてやればいいだけだろ」
「こんなになってるのに縄ほどいただけでおさまるの?岩ちゃん、お前はこのままでも平気なの?我慢強くなったんだねえ。今度試してやるよ」
「……っ!」
自分は縛られてなどいないのに。けれど目の前には着物の上から素肌まで紅い縄に絡め取られる自分がいた。何もかもが呼応している。もう双子と言うにも生ぬるい。
『……ん、なん、か……あちい』
及川が揚げ出しちゃんの笠を取り払ったのを合図に、そうっと顔を近づける。笠のなくなった彼はまるっきり岩泉だった。元より岩泉なのだけども。自分に触れる自分なんて当然初めてだし、戸惑いと、えもいわれぬ昂りで手が震える。
「……んっ、ふぁ…」
ちゅ、触れあう唇からは濡れた音。及川としかしたことはないけれど、もっとむにむにしていてやわらかい。これが自分のくちびるの感触なのだろうか。吐息が熱い。
「やわっこくて気持ちいいよね。揚げ出しちゃんもどう?お前の及川さんとは違う良さがあるでしょ?」
『や…わらけ……もっと、っ』
自分はいつもこんな蕩けた顔を及川に晒しているのかと、今さらながらとんでもない羞恥に駆られる。なのにそれを愛おしく思う自分もいて。岩泉が岩泉に。このおかしな状況にあって、まともに脳を働かせることは不可能だと、半ば諦め開き直った。
「はっ……ぁっ、んんっ!」
『……ふっ……うぅっ!んっ!』
ざりざりした舌で唇を舐めると、そろり、控えめに小さな舌が差し出される。それをべろりと舐めてから咥内へと迎え、吸って絡めて。仄かに甘くて、何というか、美味い。甘い唾液をたっぷりと纏った舌をぬるぬる自分のそれに押し当てられて、思わず上ずった声を上げてしまった。呼吸が苦しくなったのか、己の咥内へ逃げる舌を追いかける。口の中はどこも甘くて、そこだけは自分とは違うのだなと霞みゆく頭でぼんやり思った。上顎を舐めるとひときわ高いくぐもった声が聞こえる。何だ、感じるところまで同じなのか。
「……なにこの百合。お前たち随分盛り上がるね」
「…は、ぁっ。な、に?……ゆり?は、な?」
こぼれる唾液を舐めとりながら及川を見上げる。欲に濡れた榛色は金にも見えて、その煌めきにぞわりと尻尾の毛が逆立った。
「何でもないよ。可愛いねって話。揚げ出しちゃんの及川さんにも見せてあげたいなあ。はい、こっちも舐めてあげて」
『んっ!…や…っ!』
ぺらり、めくった着物の中にあったのは、とろりと先走りを滴らせているそれ。見慣れているというか、やっぱりそこも寸分違わず自分と同じだ。及川に触れられるとすぐにどろどろになってしまうモノ。恐らく揚げ出しちゃんもそうなのだろう。どこの岩泉も及川に好き勝手されているのだなと妙に感慨深い。
「……お前、根元縛るのやめろよ。これきついんだよ、クズ」
『あぁっ!ぁ…!やっ……んぁ!』
ぬるりとした先端の粘膜にそっと唇を当ててから、あふれる先走りをぺろっと舐めた。ざらざらの舌で傷をつけないように優しく丁寧に。そして、やっぱりこれも甘い。
「ん……っ。いたく、ねえ?」
こくりと頷くほぼ自分と目が合った。涙を刷いた猫目に自分はどう映っているのだろうか。
『ひぁっ!あ!…ううっ!』
「揚げ出しちゃんもおっぱい好き?」
着物の合わせをぐいと引っ張り、縄の間から覗いた乳首を及川の指がきゅっとつまんだ。既に膨らんでいる粒を指の腹で撫でて、爪を立てて、またつまんで。そうすると腰が大きく揺れ、モノからはとぷりと蜜がこぼれる。それを舐めてやって、割れ目を尖らせた舌でぐりぐり抉ると、むずがるみたいにかぶりを振った。
『あっ、ぁ!やぁっ…んんっ!』
かぷりとモノを口に含んで裏筋に沿って舌を這わせる。吸いながら先端のぐるりを舐めると、びくりとモノが震えて。そうして唇と舌を使って上下に扱くみたいに頭を動かす。唾液と先走りでじゅぷじゅぷと粘ったいやらしい音が部屋に響いた。
「揚げ出しちゃん、縄ほどいてあげるから俺の岩ちゃんも可愛がって?」
岩ちゃん。及川の甘ったるい声に動きを止める。上目遣いで見上げると。こっちにおいで、引き寄せられるみたいにモノをずるりと口から離し、及川の膝に乗り上げた。隣には縄をゆるめられた揚げ出しちゃん。はくはくと懸命に肩で息をしている。
「はい、揚げ出しちゃんも握って」
先ほど揚げ出しちゃんがされたときと同じようにめくられる自分の着物。出てきたものもその状態も同じとくれば、何とも言えない気持ちになる。及川の手に導かれて、二本まとめてモノを握らされた。揚げ出しちゃんはまだ腕が痺れているのだろう、握る力は弱くふるふる震えている。その手を包み込むみたいにきゅっと握った。互いのモノもぴくりと揺れる。
「ふぁ…ぁっ!あ、ぁぁっ!」
『んぅっ!…んっ!は…ぁっ!』
拙い動きでほぼ同じ二本のモノを擦ってゆく。くちゅくちゅ粘液の絡む音が止まらない。とろとろと漏れる先走りも止まらないのだから、その音も大きくなる一方で。腹の中が引きつるみたいにびりりと痺れる。もう互いの手のひらもモノもどろどろで、粘液は白く泡立っていた。
「っ!も、むりっ!あぁぁっ!」
『お、れもっ!だめ…っ!ふ、ぅぁっ!』
額をくっつけて熱を分け合う。それだけでは足りなくて、噛みつくみたいに唇を合わせた。唇も舌もはぐはぐ食んで、弱い上顎を舐めて舐められて。こぼれた唾液はつうっと糸を引きながら、ぐちゅぐちゅ音を立てる驚くほど熱いモノへと伝った。
「あ、あ、ぁっ!んんっ!…いっ!……っ!」
『も…ゃ…ああぁぁっ!……ぁ!』
目が合った刹那、めまいにも似た恍惚感が訪れる。ぶわりと全身の毛が逆立つみたいな、腹の中をぎゅうっと握られたみたいな、それ。もう堪えることは叶わず、同時にどぷりと飛沫を上げた。
「……見てるだけってのも何かさ…」
及川のため息をよそに、息も絶え絶えな岩泉同士が再び口づける。自分の唇は存外心地よいものだなと互いに笑みをこぼした。
その後及川専用の風呂に二人で入り、花巻の作った揚げ出し豆腐や海老料理を食べて。二人一緒に眠った。
「……ん、あげだし?」
朝、浮上した意識と共にゆるゆるとまぶたを開く。隣にいたはずの揚げ出しちゃんはどこにもおらず、岩ちゃんと呼べる者はいつもみたいに及川に抱き込まれている自分だけだった。
「帰ったんだよ。向こうでも及川さんが待ってるからね」
「……そう、か。帰れたならよかった」
「さみしい?」
「……少しな」
親や兄弟がどんなものかは知らないけれど、それよりももっと近しくて愛しい存在のような気がする。何と言っても岩泉なのだから。知ってしまえばさみしくないはずがなかった。
「また会えるよ。揚げ出しちゃんが豆腐に頭ぶつけたらね」
「次は向こうの性格がいい及川にも会いてえな。爪の垢でももらって飲めや」
「お前はさあ、ほんと俺を嫉妬させる天才だな。他の及川さんに触られないように縛り上げてやるから楽しみにしてろよ」
「……」
やっぱり及川はひとりで十分みたいだ。
またいつか、俺は、俺に、会いたい。どの岩泉にも、及川にも、幸あれかし、心からそう願ってやまない。置き土産みたいな笠は、きっと、ずっと、大切にするからな!
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