『……ん、なん、か……あちい』
及川が揚げ出しちゃんの笠を取り払ったのを合図に、そうっと顔を近づける。笠のなくなった彼はまるっきり岩泉だった。元より岩泉なのだけども。自分に触れる自分なんて当然初めてだし、戸惑いと、えもいわれぬ昂りで手が震える。
「……んっ、ふぁ…」
ちゅ、触れあう唇からは濡れた音。及川としかしたことはないけれど、もっとむにむにしていてやわらかい。これが自分のくちびるの感触なのだろうか。吐息が熱い。
「やわっこくて気持ちいいよね。揚げ出しちゃんもどう?お前の及川さんとは違う良さがあるでしょ?」
『や…わらけ……もっと、っ』
自分はいつもこんな蕩けた顔を及川に晒しているのかと、今さらながらとんでもない羞恥に駆られる。なのにそれを愛おしく思う自分もいて。岩泉が岩泉に。このおかしな状況にあって、まともに脳を働かせることは不可能だと、半ば諦め開き直った。
「はっ……ぁっ、んんっ!」
『……ふっ……うぅっ!んっ!』
ざりざりした舌で唇を舐めると、そろり、控えめに小さな舌が差し出される。それをべろりと舐めてから咥内へと迎え、吸って絡めて。仄かに甘くて、何というか、美味い。甘い唾液をたっぷりと纏った舌をぬるぬる自分のそれに押し当てられて、思わず上ずった声を上げてしまった。呼吸が苦しくなったのか、己の咥内へ逃げる舌を追いかける。口の中はどこも甘くて、そこだけは自分とは違うのだなと霞みゆく頭でぼんやり思った。上顎を舐めるとひときわ高いくぐもった声が聞こえる。何だ、感じるところまで同じなのか。
「……なにこの百合。お前たち随分盛り上がるね」
「…は、ぁっ。な、に?……ゆり?は、な?」
こぼれる唾液を舐めとりながら及川を見上げる。欲に濡れた榛色は金にも見えて、その煌めきにぞわりと尻尾の毛が逆立った。
「何でもないよ。可愛いねって話。揚げ出しちゃんの及川さんにも見せてあげたいなあ。はい、こっちも舐めてあげて」
『んっ!…や…っ!』
ぺらり、めくった着物の中にあったのは、とろりと先走りを滴らせているそれ。見慣れているというか、やっぱりそこも寸分違わず自分と同じだ。及川に触れられるとすぐにどろどろになってしまうモノ。恐らく揚げ出しちゃんもそうなのだろう。どこの岩泉も及川に好き勝手されているのだなと妙に感慨深い。
「……お前、根元縛るのやめろよ。これきついんだよ、クズ」
『あぁっ!ぁ…!やっ……んぁ!』
ぬるりとした先端の粘膜にそっと唇を当ててから、あふれる先走りをぺろっと舐めた。ざらざらの舌で傷をつけないように優しく丁寧に。そして、やっぱりこれも甘い。
「ん……っ。いたく、ねえ?」
こくりと頷くほぼ自分と目が合った。涙を刷いた猫目に自分はどう映っているのだろうか。
『ひぁっ!あ!…ううっ!』
「揚げ出しちゃんもおっぱい好き?」
着物の合わせをぐいと引っ張り、縄の間から覗いた乳首を及川の指がきゅっとつまんだ。既に膨らんでいる粒を指の腹で撫でて、爪を立てて、またつまんで。そうすると腰が大きく揺れ、モノからはとぷりと蜜がこぼれる。それを舐めてやって、割れ目を尖らせた舌でぐりぐり抉ると、むずがるみたいにかぶりを振った。
『あっ、ぁ!やぁっ…んんっ!』
かぷりとモノを口に含んで裏筋に沿って舌を這わせる。吸いながら先端のぐるりを舐めると、びくりとモノが震えて。そうして唇と舌を使って上下に扱くみたいに頭を動かす。唾液と先走りでじゅぷじゅぷと粘ったいやらしい音が部屋に響いた。
「揚げ出しちゃん、縄ほどいてあげるから俺の岩ちゃんも可愛がって?」
岩ちゃん。及川の甘ったるい声に動きを止める。上目遣いで見上げると。こっちにおいで、引き寄せられるみたいにモノをずるりと口から離し、及川の膝に乗り上げた。隣には縄をゆるめられた揚げ出しちゃん。はくはくと懸命に肩で息をしている。
「はい、揚げ出しちゃんも握って」
先ほど揚げ出しちゃんがされたときと同じようにめくられる自分の着物。出てきたものもその状態も同じとくれば、何とも言えない気持ちになる。及川の手に導かれて、二本まとめてモノを握らされた。揚げ出しちゃんはまだ腕が痺れているのだろう、握る力は弱くふるふる震えている。その手を包み込むみたいにきゅっと握った。互いのモノもぴくりと揺れる。
「ふぁ…ぁっ!あ、ぁぁっ!」
『んぅっ!…んっ!は…ぁっ!』
拙い動きでほぼ同じ二本のモノを擦ってゆく。くちゅくちゅ粘液の絡む音が止まらない。とろとろと漏れる先走りも止まらないのだから、その音も大きくなる一方で。腹の中が引きつるみたいにびりりと痺れる。もう互いの手のひらもモノもどろどろで、粘液は白く泡立っていた。
「っ!も、むりっ!あぁぁっ!」
『お、れもっ!だめ…っ!ふ、ぅぁっ!』
額をくっつけて熱を分け合う。それだけでは足りなくて、噛みつくみたいに唇を合わせた。唇も舌もはぐはぐ食んで、弱い上顎を舐めて舐められて。こぼれた唾液はつうっと糸を引きながら、ぐちゅぐちゅ音を立てる驚くほど熱いモノへと伝った。
「あ、あ、ぁっ!んんっ!…いっ!……っ!」
『も…ゃ…ああぁぁっ!……ぁ!』
目が合った刹那、めまいにも似た恍惚感が訪れる。ぶわりと全身の毛が逆立つみたいな、腹の中をぎゅうっと握られたみたいな、それ。もう堪えることは叶わず、同時にどぷりと飛沫を上げた。
「……見てるだけってのも何かさ…」
及川のため息をよそに、息も絶え絶えな岩泉同士が再び口づける。自分の唇は存外心地よいものだなと互いに笑みをこぼした。
その後及川専用の風呂に二人で入り、花巻の作った揚げ出し豆腐や海老料理を食べて。二人一緒に眠った。
「……ん、あげだし?」
朝、浮上した意識と共にゆるゆるとまぶたを開く。隣にいたはずの揚げ出しちゃんはどこにもおらず、岩ちゃんと呼べる者はいつもみたいに及川に抱き込まれている自分だけだった。
「帰ったんだよ。向こうでも及川さんが待ってるからね」
「……そう、か。帰れたならよかった」
「さみしい?」
「……少しな」
親や兄弟がどんなものかは知らないけれど、それよりももっと近しくて愛しい存在のような気がする。何と言っても岩泉なのだから。知ってしまえばさみしくないはずがなかった。
「また会えるよ。揚げ出しちゃんが豆腐に頭ぶつけたらね」
「次は向こうの性格がいい及川にも会いてえな。爪の垢でももらって飲めや」
「お前はさあ、ほんと俺を嫉妬させる天才だな。他の及川さんに触られないように縛り上げてやるから楽しみにしてろよ」
「……」
やっぱり及川はひとりで十分みたいだ。
またいつか、俺は、俺に、会いたい。どの岩泉にも、及川にも、幸あれかし、心からそう願ってやまない。置き土産みたいな笠は、きっと、ずっと、大切にするからな!
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