うららかな春の白む光にやわらかく包まれながら、月島はソファの上、ふわふわとしたお気に入りのクッションを枕にうたた寝をしていた。淡藤色をしたなめらかなベルベット生地のそれは月島が気に入るだろうと赤葦が買い与えたものの一つで、中材がダウンだとこうも柔らかくて軽いのかと、初めて触れたときの心地よさと感動は今でも褪せることなくはっきりと覚えている。
赤葦の大学卒業を機に共に暮らし始めて一月あまり。もともと半同棲のようなものではあったのだけど、おはようからおやすみまでを毎日二人で過ごせる喜びは、互いにとって幸せ以外の何物でもなかった。
この生活に不満は、ない。全くない。赤葦は月島の扱い方を熟知していたので、つまらない意地など張る必要はひとつとしてなくて。それはもう、赤葦作の分厚い取り扱い説明書が作れるほどに。
赤葦は常に冷静なようでいて愛情表現は豊か、かつストレート。そして倹約家かと思いきや、二人で過ごすためであれば、それも主に月島のためなのだけれど、ひとつも惜しむことなく金を使う。学生時代からバレーを続けながらもアルバイトをして貯めてきた貯金はどうしてか額が増えていて、一時は何かおかしなことでもしているのかと本気で心配もした。恐る恐る問えば流行りのNISAだそうで、月島もやってみたらとやり方を丁寧に教えられたのだけど、大切な蓄えを減らしてしまうことを懸念して未だ手を出せずにいる。
『月島はそんなこと気にしなくていいよ。増えても減っても、可愛い嫁のために俺が稼いでくるんだから』
『よっ、よめ!……やめて下さい!』
『ん?じゃあ、婿ね。俺の可愛いお婿さ……』
『っ!!一緒だから!……ほんと恥ずかしいし……っていうか!…嫁、で…いいから……』
一事が万事この調子で、赤葦は自分は愛する月島のためだけに生きていると言って憚らなかった。そう、不満は欠片もないのだけど、幸せすぎて怖いとはこのことなのだなと、かつては鼻で笑っていたようなことを今、身をもって実感させられている。赤葦という男は、今までに食べてきたどのスイーツよりも、あまいあまいひとであった。
「……ん…ふぁ…めーる?」
ソファの前にあるガラステーブルの上で、携帯の着信を知らせる音が軽やかに響いている。ぱちぱちと瞬きをしながら長い腕を伸ばしてそれを手に取ると、やはり赤葦からのメールだった。
『お疲れさま。昼寝はベッドでしないと風邪ひくよ。さっき言われたんだけど、この前話したプロジェクトのサブリーダーをやることになった。面白そうだからやってみるよ』
休講だからと朝から家事に精を出し、午後のあたたかな陽気のなかお気に入りのクッションに埋もれていれば、いつの間にか微睡んでしまうのも仕方がない。けれど行動パターンを見事に読まれているのは何故なのか。
『お疲れさまです。もう起きました。サブリーダー、おめでとうございます。何かお祝いしましょう』
入社してから、つい先日研修を終えたばかりだというのに、この抜擢は何なのだろうか。高校生の頃から巧みな交渉術、物事を冷静に俯瞰する能力に長けてはいたが、それは年を追うごとに更に研ぎ澄まされているように思う。若く動ける者を求めるプロジェクトと言えど、会社から認められる赤葦のことが素直に誇らしかった。
『ありがとう。月島の好きなケーキ買って帰るから。昨日より愛してる』
「……あまいんだけど」
目元を桜色に染めた月島はクッションにぐいぐい顔を押し付けながら、ぼくもだからとくぐもった声で呟く。
きっと明日は、今日よりもっと、あいしている。
「っ?!ちょっと!なにしてるのっ?!」
「何って、月島のおまんこ、舐めてる」
「……なっ!…めなくて、いいから!」
あれから買い物に行き、赤葦が好きなものばかりの夕食を準備して、帰った赤葦とシャンパンで乾杯をした。食後には紅茶とケーキをゆっくりと楽しみ、風呂にも入り、そしてお祝いしてよとベッドに押し倒されたのがほんの少し前。
相も変わらず赤葦の唇と舌はやわらかくて、くちゅりと音を立てながら舌を絡め取る口付けにゆるく意識を持っていかれる。したたるほどに唾液を纏った赤い舌は赤葦の独占欲の表れで、甘露のようなそれをたどたどしくも舐めとりこくりと嚥下すれば、鼻に抜ける色を滲ませた吐息が赤葦の充足を伝えた。
口付けに夢中で応えているうちに丸裸にされるのはいつものことで、この日も気付けば赤葦のすらりとした長い指が素肌を辿る。普段は少しひんやりしている指も今は肌と同じだけあたたかかった。
シーツに仰向けで沈む月島の、眩しいほどに白い脚の間に身を置いた赤葦は、ぐい、とその脚を持ち上げ下腹部へ顔を近付ける。てっきりモノを舐められるのだとばかり思っていた月島は、その更に奥、慎ましく閉じているソコにつうっと舌が這う感覚にびくりと腿を震わせた。
「お祝い、してくれるんだよね?今日はおまんことろとろになるまで舐めたい気分だから諦めて」
「んっ!……そんなとこ、っ!…あぁっ!」
別に今まで舐められたことがないわけではない。けれど罪悪感にも似た羞恥に耐えられず、いつも、すぐにやめてくれと潤む瞳で懇願していた。基本赤葦は月島に無理強いはしないものの、結果的に舐められたほうがまだましだったというようなことをされることは多々ある。なので、どちらにしても月島には赤葦の気が済むまで泣かされるしか道はないのだ。
「もうやわらかくなった。舌が入るね。指とどっちがいい?」
「ぁ!っ!んんっ!…や、ぁ…!」
あの、とろりとした舌に丹念というよりしつこいまでにひだのひとつひとつを舐められ、入り口がやわらかく綻ぶのがわかる。赤葦の吐息にすらソコはひくりと喘ぎを見せ、喋るなと言いたかったけれど、もう意味のある言葉を紡ぐことはできなかった。唾液を注ぎながらちゅぷ、と尖らせた舌を捩じ込まれると、ナカが我ときゅうきゅうそれを締め付ける。
「ん、あぁっ!だめ…っ!あか…あっ!」
「……は、ぁっ。俺のちんこ、入れてるときみたいに気持ちいい、よ」
ぐうっと入るだけ舌がナカを抉り、それを何度も繰り返されると何かを握っていなければおかしくなりそうで、爪を立てながらシーツを手繰り寄せた。モノからこぼれた透明な粘液がとろりと腹を伝う。舌が触れているところからぐずぐずに崩れてしまうようだった。
「も、っ!なんか…へ…んっ!」
ぬるりと出ていった舌と入れ替わりに、つぷ……爪もきれいに切り揃えられた長い指がゆっくりとナカを埋めていく。
「まんこのなか、ぬるぬるのとろとろになってるね」
「ふっ、うあぁぁっ!…やっ!あ!ああぁっ!!」
やにわにせり上がる熱が一気に下腹を焼いた。きゅ、きゅうっとナカの指を思い切り締め付け、背を弓なりに反らせると、目の前が鮮やかな白に染まる。
腹に落ちる飛沫がやけにあたたかくて、無意識のうちにふるりと身体を震わせた。
「善がる月島見てるだけでイキそうなんだけど。可愛いね、お前は」
べろりと腹の白濁を舐めとられ、やはりそこから蕩けてしまいそうだと霞む頭でそう思う。もっと、混じりあうほどに溶かされたくて、もっと、あまさを味わいたくて、微かに震える手を艶やかに笑むいとしいひとへそうっと伸ばした。
あまいものは別腹だと言うけれど、甘味のフルコースを平らげたとしても、やっぱりデザートは別腹。
甘味依存は、もう治りそうもない。
赤葦×月島|
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