古橋くんと下校
康次郎くんはきょろきょろとあたりを見回し、私を見つけると少しだけ目を見開いた。やっぱり一緒に帰る約束せずに待っていたのは迷惑だっただろうかと今更焦りを感じる。
「――帰るか」
いつもどおりの康次郎くんの声。よかった、怒ってないみたい。胸をなで下ろし、私は一足先を歩く康次郎くんの後ろをついて行く。
特に何かを話すわけでもなく2人並んで歩く。決して私のペースに合わせてはくれないけれど、何度か私の方を振り向いてくれる康次郎くんは優しいと思う。
15分ほど歩くとあらわれる二股の分かれ道。右の道を行ったすぐのところには康次郎くんの家が見える。
分かれ道の真ん前で康次郎くんは立ち止まり、こちらを振り返る。私を見つめる目はどこか寂しげで、きゅんと胸が高鳴る。明日も会えるから大丈夫だよ、寂しくないよ。そう微笑むと康次郎くんは顔を前に向けて歩き始める。康次郎くんが部屋に入るのを確認してから、私は自分の家へ歩みを進めた。
***
部活が終わり部室を出ると、いつものように外で俺を待つ一人の女子の姿。今日もいるのかと少し驚くと、彼女はそっと顔を伏せる。
「またいるのか?」
花宮が部室の鍵を閉めながら問いかける。
「そうみたいだな」
「恨まれでもしたか?そのうち刺されるなよ」
「洒落にならないな…。まぁいい、帰るか」
鍵を返しに行く花宮と別れ、一人校門をくぐる。
彼女に追いつかれないように歩を進める。途中舐め回すような気持ちの悪い視線に、何度も振り向いてしまいながらも、家のすぐそばの分かれ道までたどり着く。彼女が居なくなっている事を心の中で願いつつゆっくりと振り返ると、しっかりと彼女はいた。
「明日も会えるから大丈夫だよ、寂しくないよ」
彼女は俺に向けて笑顔で呟く。これ以上関わりたくなくて、足早に家へと戻る。一直線に部屋まで戻り、カーテンを閉めようと近づいた窓辺からは、こちらを見つめる彼女の姿が見えた。
古橋くんと下校