八戒くんと歳上幼なじみA




「すっかり暗くなっちゃったねぇ」

高く昇った月を見上げる。
さっきまで明るいと思っていた空は完全に暗くなり、昼間と違う冷たい風が吹いていた。
もう1枚持ってくれば良かったかな。5分袖のブラウスから露出した腕をさすっていると、八戒くんに名前を呼ばれる。なぁに?顔を横に向けるとずいと差し出された彼のジャケットが目に入る。
ジャケットと彼の顔を交互に眺めていると彼が口を開いた。

「良かったら、着てよ」
「あ、え…、いいの?八戒くん寒くない?」
「オレはへーき」

にっこり笑う八戒くんに甘えてジャケットを受け取る。可愛くて優しい彼氏、最高では?
いざ袖を通すと手の先まで完全に隠れてしまい、彼との体格差を意識してしまう。

「うわぁ」

1度意識するといろんな事に意識が向いてしまう。
カバンを持ち直そうと体を揺らすと自分と違う匂いが鼻をかすめる。
服に少しだけ残っていた体温が彼のものだと思うとその生暖かさも心地いい。
これはやばいかもしれない。
首元がじわじわと熱くなり、その熱が全身に渡っていく。
パタパタと手で頬を仰ぐ私を不思議そうに彼は見つめる。

「顔、ちょー赤いけど大丈夫……?」

心配そうにもしかして風邪とか……!?と話しかけてくる八戒くんがあまりに可愛くて一種の熱に浮かされた私はぽろぽろと本音をこぼす。

「八戒くんってやっぱり大きいんだなぁとかいい匂いするなって思ったらすっごいドキドキしちゃった……」
「え」

驚いたような声をあげ固まる八戒くん。引かれたかと思いをぶちまけ徐々に冷静になっていった事で不安になる。今からでも取り繕おうと声をかけようとする私より先に彼が口を開く。

「なんかすっげーキュンときた……」

口元を抑えてぽつりとつぶやく彼の姿に今度は私の心臓がキュンとなる番だった。