太陽ってなんだろう。私は幼い頃から、太陽というものに人一倍興味を持っていた。きっと暖かくて、眩しくて、皆を幸せにするような存在なのだろう。残念ながら、私はその恵みを享受できないのだけれど。

色素性乾皮症、というらしい私の病気は、太陽に照らされることを許さない。幼い頃からずっと、私は日光を避けて生きてきた。きっと一生手が届かないことを知っているから、尚更知りたくなるのだ。

「こんにちは、また本を読んでるの?」

太陽についての分厚い本を読んでいると、不意に柔らかな声が聞こえてきた。顔を上げれば、日和さんがにっこりと可愛らしい笑顔を浮かべている。

日和さんは幼い頃から決められていた婚約者だ。いつもアイドル活動で忙しい彼だけど、たまの休日にこうして会いに来てくれる。今日は来てくれる約束だったのに、すっかり本に夢中で時間を忘れていた。

「日和さん。ごめんなさい、気付かなくて」
「うんうん、使用人さんが本に夢中だって困ってたね。……また太陽の本?」

私のいるソファに腰掛けて、彼は私の読んでいた本を覗き込む。

「そんなに、太陽が好き?」
「……うん。昔は少しだけ、嫌いだったけど……今は好き」

私がそう言って笑うと、彼は優しく微笑んで私の横髪を耳にかけた。若草色のふわふわの髪の毛、アメジストのように透き通った真っ直ぐな瞳、いつも楽しげに笑っている形のいい唇。

――日和さんはきっと、太陽なんだと思う。彼の手が、そっと私の頬を撫でた。彼の手は暖かく、その手つきはいつだって優しい。

「日和さんが太陽みたいだから、好きになっちゃった」
「……ぼく、太陽みたいなの? ふふ、どういうところが?」

私の頬に添えた手に擦り寄って、彼を真似るように笑う。彼といると、不思議と心が温かくなって幸せな気分になれる。一度も経験したことはないけれど、日だまりにいるときってきっとこんな気持ちなのだろう。

「あたたかくて優しくて、幸せにしてくれるところ。それに、いつもきらきら輝いてて眩しいところかな」
「ふぅん……ぼくといると幸せ?」
「うん、世界一幸せ」
「うんうん、当然だよね! きみが本物の太陽を見られない分、ぼくが隣で輝いてあげるからね」

日和さんは嬉しそうにそう笑って、ちゅ、と軽くキスをしてきた。

「……うん、ありがとう」

私の頬に添えられた手に自分の手を重ねて、そっと目を閉じる。本物の太陽には嫌われてしまったけれど、本物の太陽よりずっと愛おしい彼がそばにいるのなら、きっとこれ以上幸せなことはないのだろう。