「……お〜い、一体いつまで泣いておるつもりなんじゃ」

自分の背中にくっついたまま離れない少女を、暫くは放っておいたものの、やはり一向に泣き止む気配がないので読みかけの本を置き声をかけた。彼女は時折しゃくりあげながら、ぽつりと言葉を零す。

「だって、だって……零くんが……」
「おや、我輩のせいで泣いておるのかえ?」
「零くんがくれたネックレス……なくしちゃったの、ごめんなさい……」

泣いている理由を打ち明けると、彼女はまた大粒の涙を流してわんわん泣き始めた。なんだそんなことか、と胸を撫で下ろし、彼女を振り向く。

俯いたままの彼女の頭を撫で、なるべく優しく、幼子に言い聞かせるように宥めてやった。

「どんな物もいつかはなくなるものじゃ、ちとお別れが早かったが……ふむ、今度は二人で選びに行くというのも良いかも知れぬぞい」
「……お揃いのがいい……」

やっと顔を上げた彼女は、目もとを赤くしたままこちらを見つめた。まだ諦めきれていないらしい、申し訳なさそうで後悔に満ちた表情だ。なんとも幼気で、庇護欲をそそられる。

「そうじゃのう……なら、そろそろネックレスよりも、」

言葉の途中でそっと彼女の左手を取り、薬指の付け根に唇を寄せた。

「ここにつけるもののほうが、良いかもしれんな?」

にやりと笑って見せると、彼女は耳まで真っ赤にして、せっかく止まっていた涙をまたぼろぼろ流し始めた。しかし今度は口もとがゆるんで、確かに笑っている。

「ずるい、そんなの嬉しくなっちゃうじゃん」
「うむ、我輩はお主が幸福でおるのが一番だぞい」

細い身体を抱き寄せ、つむじにキスをしてやる。彼女は応えるように背に手を回し、ぎゅっと抱き返してくれた。

「……愛しておるよ、だから泣かないでおくれ」
「うん……ふふ、ありがとう」

なんてか弱くていじらしい生き物なのだろう。ネックレスひとつでこんなに泣きじゃくるなんて。けれどそれが俺のせいだって言うんだから、こんなに光栄なことはない。

今はまだ何もない綺麗な薬指を優しくなぞって、くすりと微笑んだ。