「…………きみのことは誰より、何より愛してるね。それは知ってる?」

目の前の美しいひとは、私の頬を撫でながら悲しそうに呟いた。その温かな手に擦り寄って頷き、そっと睫毛を伏せる。

「愛してる、だけどなまえ、これはダメなことだね」
「……どうして、」
「どうしてだかわからないほど、きみは馬鹿な子じゃないよね」
「……そんなの、わかりたくありません」

白いシーツに埋もれるお兄さまは、優しく私の頭を撫でる。私の、お兄さまと同じ色の瞳から零れた雫が、お兄さまの頬を濡らした。

「ただ、日和お兄さまが好きなだけなのに……」
「うんうん、ぼくも同じだね。でもこれは超えちゃいけない一線だね。ぼくは……他の女の子にするように、なまえの肌を暴いて、犯してしまうなんて……したくないね」
「それは、私を女として愛してないから?」
「……まさか」

お兄さまは自嘲気味に笑って、自分の上に覆いかぶさっていた私をベッドに押さえつけた。今まで見せられたことのない、れっきとした「男」としての一面に思わず怯む。

「きみに怖がられたくないからだね。どうしたってぼくはきみのお兄ちゃんだから、きみを傷付けたくないし、怖がらせたくない。でも愛しているから、傷付けてしまいたいしぼくだけを見て欲しい」
「……それなら、」

いっそ傷付けて、と言う前に唇を塞がれた。涙でしょっぱい味がした。お兄さまはやっぱり寂しそうな笑顔を浮かべて、私を見下ろしている。

「だめ。この先、きみがお嫁さんにいかなきゃいけなくなったとき、きっと殺しちゃうからね。……今だっていっそ、殺しちゃいたい」

日和お兄さまの、しなやかで美しい手が私の首に回る。ギリ、と手に力が入って、息が苦しくなる。頭が真っ白になって、視界がぼやける。お兄さましか見えなくなる。

「……お、にい、さ……ま…………」
「…………愛してるね、誰よりも、何よりも」

甘い声が耳元に優しく囁いた。このまま、このままお兄さまに殺されたって、私はちっとも構わないのに。

好きでもない他人と結婚させられて子どもを産まされ生きていく人生と、このままお兄さまに殺されて堕ちる地獄と、どっちが幸福だろう。

――なんて、言葉にするまでもなく明白なのに。