言葉にして
「……ねぇ、これ、いつまで続けるの?」
そうやって終わりを告げようとしたのは、私のほうだった。彼はシャツを脱いで上半身を露わにしたところで、きょとんと首を傾げる。
「まだ何もしていないけれど……」
「今からするでしょ。……いつまでセックスするの?」
「ええと、今が0時だから、2〜3時間と想定して……」
「そうじゃない。……いったいいつまで、こうしてセックスし合う仲でいるのって訊いてるの」
私はベッドに寝そべったまま、いつもより低い声で、なるだけ彼を見ないように言いきった。彼はやはり、何となくぼうっとした反応のままだ。
凪砂くんと初めてこういうことをしたのは、多分一年くらい前のことだ。彼の知的好奇心が発端で、なぜだかその相手に私が選ばれた。頼める友人として最適だったのだろう。
最初こそ彼の美しい顔と洗練された身体に心臓を高鳴らせ、歓喜していた。けれど、今では気持ちよさなんかより苦しさのほうがずっと大きいのだ。
「……わからない。未来のことは断言出来ないよ、私は神ではないから」
「なら教えてあげる、もう終わりだよ。私はもう貴方とこういうこと、したくないから。……もっと早く言うべきだった。ごめんね」
体を起こして広いベッドから離れようとすると、思わぬ強さで手首を掴まれ、そのままベッドに戻された。
ギシッ、と大きくスプリングが軋む。部屋の電気と逆光になった彼の顔に影がさして、普段より一層表情が読み取れない。紅い瞳は冷たく私を見下ろしていた。
「どうして、したくないのか教えてほしい。私が嫌いになった?」
「……まるで、元々凪砂くんのこと好きだったみたいな言い方だね」
「違うの?」
「…………違うよ」
本当は違わないけれど、そんなこと、どちらだって構わない。今肝心なのは私がもう彼の相手をしたくないと思っていることなんだから。
私の手首をベッドに押さえつける彼の手が、ぎり、と強く力む。
「なら、どうして今まで私を受け入れてくれていたの? ……私は、きみが受け入れてくれたのが何より嬉しかったのに。からかっていた?」
「からかってるのは凪砂くんのほうでしょ。……何回セックスしたって、ちゃんと好きとは言ってくれない。結局丁度いい性欲処理の相手が欲しいだけじゃないの? 最初だって、手頃なところに手頃な女がいただけでしょ。ずっとそのままずるずる続けてきただけ」
吐き捨てるようにそう言うと、彼は暫く黙り込んだ。重い沈黙が私の胸をちくちくと刺す。暫くして、やっと彼が口を開いた。
「…………ごめんね、私……ちゃんと、伝えられていなかった。誰でも良かったなんて初めから思っていなかったよ、私はずっと、なまえ、きみが好きだった」
「そんなの……そんなの、今まで一度も……」
「うん、本当にごめんね。私、てっきり全部伝わってると思ってたんだ。……今日で終わりなんて言わないで、お願い」
凪砂くんは寂しそうな顔で、私の額にキスをした。嬉しいような、何だか腹が立つような、それでもやっぱり嬉しいような、よくわからない気持ちだ。
「それは、その……付き合っても良いってこと?」
「うん。……というか、私はてっきりもうそういう関係なんだと思ってた」
「…………私、凪砂くんが何考えてるのか全然わからなかった。……これからは、わかるようになる?」
凪砂くんの頬に手を伸ばして、恐る恐るそう訊ねた。ふっと優しく笑って、凪砂くんは私にキスをする。今まで何度も何度もキスをしたけれど、こんなに幸福を感じたのは初めてだった。
……初めて、彼と通じ合えたような気がした。
「ちゃんと伝えるよ。……今までの分も」
そうやって終わりを告げようとしたのは、私のほうだった。彼はシャツを脱いで上半身を露わにしたところで、きょとんと首を傾げる。
「まだ何もしていないけれど……」
「今からするでしょ。……いつまでセックスするの?」
「ええと、今が0時だから、2〜3時間と想定して……」
「そうじゃない。……いったいいつまで、こうしてセックスし合う仲でいるのって訊いてるの」
私はベッドに寝そべったまま、いつもより低い声で、なるだけ彼を見ないように言いきった。彼はやはり、何となくぼうっとした反応のままだ。
凪砂くんと初めてこういうことをしたのは、多分一年くらい前のことだ。彼の知的好奇心が発端で、なぜだかその相手に私が選ばれた。頼める友人として最適だったのだろう。
最初こそ彼の美しい顔と洗練された身体に心臓を高鳴らせ、歓喜していた。けれど、今では気持ちよさなんかより苦しさのほうがずっと大きいのだ。
「……わからない。未来のことは断言出来ないよ、私は神ではないから」
「なら教えてあげる、もう終わりだよ。私はもう貴方とこういうこと、したくないから。……もっと早く言うべきだった。ごめんね」
体を起こして広いベッドから離れようとすると、思わぬ強さで手首を掴まれ、そのままベッドに戻された。
ギシッ、と大きくスプリングが軋む。部屋の電気と逆光になった彼の顔に影がさして、普段より一層表情が読み取れない。紅い瞳は冷たく私を見下ろしていた。
「どうして、したくないのか教えてほしい。私が嫌いになった?」
「……まるで、元々凪砂くんのこと好きだったみたいな言い方だね」
「違うの?」
「…………違うよ」
本当は違わないけれど、そんなこと、どちらだって構わない。今肝心なのは私がもう彼の相手をしたくないと思っていることなんだから。
私の手首をベッドに押さえつける彼の手が、ぎり、と強く力む。
「なら、どうして今まで私を受け入れてくれていたの? ……私は、きみが受け入れてくれたのが何より嬉しかったのに。からかっていた?」
「からかってるのは凪砂くんのほうでしょ。……何回セックスしたって、ちゃんと好きとは言ってくれない。結局丁度いい性欲処理の相手が欲しいだけじゃないの? 最初だって、手頃なところに手頃な女がいただけでしょ。ずっとそのままずるずる続けてきただけ」
吐き捨てるようにそう言うと、彼は暫く黙り込んだ。重い沈黙が私の胸をちくちくと刺す。暫くして、やっと彼が口を開いた。
「…………ごめんね、私……ちゃんと、伝えられていなかった。誰でも良かったなんて初めから思っていなかったよ、私はずっと、なまえ、きみが好きだった」
「そんなの……そんなの、今まで一度も……」
「うん、本当にごめんね。私、てっきり全部伝わってると思ってたんだ。……今日で終わりなんて言わないで、お願い」
凪砂くんは寂しそうな顔で、私の額にキスをした。嬉しいような、何だか腹が立つような、それでもやっぱり嬉しいような、よくわからない気持ちだ。
「それは、その……付き合っても良いってこと?」
「うん。……というか、私はてっきりもうそういう関係なんだと思ってた」
「…………私、凪砂くんが何考えてるのか全然わからなかった。……これからは、わかるようになる?」
凪砂くんの頬に手を伸ばして、恐る恐るそう訊ねた。ふっと優しく笑って、凪砂くんは私にキスをする。今まで何度も何度もキスをしたけれど、こんなに幸福を感じたのは初めてだった。
……初めて、彼と通じ合えたような気がした。
「ちゃんと伝えるよ。……今までの分も」