檸檬爆弾
「レモン……ですか?」
恋人の作った肉じゃがをひとくち食べて、口内に残る爽やかさの正体を口にした。彼女はくすりと微笑み、頷く。
「よくわかったね。そう、レモンの皮をすりおろしたのを入れたの」
「なるほど? ……肉じゃがではありませんな」
「グルーストゥルだよ、イタリア料理」
「貴女これ出した時肉じゃがって言いませんでした?」
確かに爽やかで美味しい、けれど最初に元来の肉じゃがを想定して食べてしまったせいで、舌が混乱している。
なまえはそんな俺を見て、愉快そうにくすくす笑っていた。俺は一度水を飲んでから、先程の爽やかさを想定しもうひとくち、グルーストゥルを口にした。
「うん、美味い」
「良かった。……檸檬って、茨に似合うと思って」
なまえは不意にそう言って俺を見た。しかし、レモンというとなんとなく初々しく、瑞々しく、たくさんの太陽を浴びているもの……というイメージが強い。まるで自分とは正反対だ。
「レモンの実を食う害虫のほうが、よっぽど自分らしい」
「それは、そうだけど」
なまえはひとくち料理を食べて、よく咀嚼する。
彼女との会話はいつでもマイペースだ。料理をよくすり潰してから飲み込むように、彼女はいちいち俺の言葉をよく味わう。別にそれについては不快に思わない。閣下も同じような節があるからだ。無論、彼のほうが予想だにしない返答を持ち出してくるのだが。
「檸檬は、あんなに綺麗なのに爆弾だから。茨、爆弾好きでしょう?」
「爆弾……あぁ、何かと思えば、梶井基次郎ですか」
「ふふ、そう。茨もこんなに綺麗なのに、中身は爆弾みたい」
「褒めてるのか貶してるのかわかりませんね」
はあ、とわざとらしく溜め息をついてみせると、彼女はくすくす笑った。
「褒めてるよ、私、檸檬好きだもん」
「……どのレモン?」
「茨って名前の檸檬」
「あっそう」
俺がぶっきらぼうにそう答えると、彼女は益々愉しそうに笑う。
「茨、照れてる?」
「照れてない」
「嬉しい?」
「……うるせー」
ばくばく料理を口に詰め込むと、彼女もまた、ひとくち料理を口に含んだ。
全くいつでもペースを崩される。よっぽど俺より爆弾みたいな女だ、とは、思っても言葉にしなかった。結局、そんな爆弾も好きだなんて打ち明けるはめになるだろうから。
恋人の作った肉じゃがをひとくち食べて、口内に残る爽やかさの正体を口にした。彼女はくすりと微笑み、頷く。
「よくわかったね。そう、レモンの皮をすりおろしたのを入れたの」
「なるほど? ……肉じゃがではありませんな」
「グルーストゥルだよ、イタリア料理」
「貴女これ出した時肉じゃがって言いませんでした?」
確かに爽やかで美味しい、けれど最初に元来の肉じゃがを想定して食べてしまったせいで、舌が混乱している。
なまえはそんな俺を見て、愉快そうにくすくす笑っていた。俺は一度水を飲んでから、先程の爽やかさを想定しもうひとくち、グルーストゥルを口にした。
「うん、美味い」
「良かった。……檸檬って、茨に似合うと思って」
なまえは不意にそう言って俺を見た。しかし、レモンというとなんとなく初々しく、瑞々しく、たくさんの太陽を浴びているもの……というイメージが強い。まるで自分とは正反対だ。
「レモンの実を食う害虫のほうが、よっぽど自分らしい」
「それは、そうだけど」
なまえはひとくち料理を食べて、よく咀嚼する。
彼女との会話はいつでもマイペースだ。料理をよくすり潰してから飲み込むように、彼女はいちいち俺の言葉をよく味わう。別にそれについては不快に思わない。閣下も同じような節があるからだ。無論、彼のほうが予想だにしない返答を持ち出してくるのだが。
「檸檬は、あんなに綺麗なのに爆弾だから。茨、爆弾好きでしょう?」
「爆弾……あぁ、何かと思えば、梶井基次郎ですか」
「ふふ、そう。茨もこんなに綺麗なのに、中身は爆弾みたい」
「褒めてるのか貶してるのかわかりませんね」
はあ、とわざとらしく溜め息をついてみせると、彼女はくすくす笑った。
「褒めてるよ、私、檸檬好きだもん」
「……どのレモン?」
「茨って名前の檸檬」
「あっそう」
俺がぶっきらぼうにそう答えると、彼女は益々愉しそうに笑う。
「茨、照れてる?」
「照れてない」
「嬉しい?」
「……うるせー」
ばくばく料理を口に詰め込むと、彼女もまた、ひとくち料理を口に含んだ。
全くいつでもペースを崩される。よっぽど俺より爆弾みたいな女だ、とは、思っても言葉にしなかった。結局、そんな爆弾も好きだなんて打ち明けるはめになるだろうから。