許容範囲
「……そう。良いんじゃない?」
「へ?」
彼女の潔い回答に、思わず間抜けな声を出してしまいました。というのも、今回ばかりは怒鳴られるか、それでなくとも嫌な顔をされるだろうと予想していたからです。
私は、次のドラマの仕事で、所謂濡れ場というのものを演じるつもりでいます。交際中の彼女にそれを一切伝えないのも不誠実だろうと思って、殴られることも嫌がられることも覚悟でその話を切り出したのです、が。
「ほ……本当に、良いのですか? その……濡れ場ですよ? 意味わかってます?」
「しつこいな、わかってるよ。……嫌がって欲しかったの?」
彼女は読んでいた本を閉じ、真正面に私を見据えて軽く笑いました。それが皮肉ではなく、ただの微笑みのようでしたので、益々混乱してしまいます。
「いえ、その……普通、やはり嫌がられるものだろうと思っていたのです。今まで貴女にしか見せていなかった部分を曝け出すのですから……貴女からすれば、愉快ではないかと」
「ふふ……渉のえっちな顔がテレビでも見られるなんて贅沢。それにこんなに良い男が自分のものだなんて、これ以上幸せなことはないよ」
ねぇ、と彼女は少し甘えたような声を出して、私の手に自分の手を重ねました。どちらからともなく指を絡ませ、じっと見つめ合います。
「渉が誰とセックスしようが私には関係ないよ。だって渉は必ず私のもとへ帰ってくるでしょう。それに、貴方の心は私のところに置いてってくれるでしょ? だから、今更誰かに嫉妬したりしないよ」
「なまえ……貴女を見くびっていたようですね、すみません。その通りです。私は必ず貴女のもとへ帰って来ますし、私の魂はいつも貴女とともにありますよ」
私がそう答えると、彼女は満足そうににっこり笑いました。そして不意に身を乗り出して、テーブルに膝をつき、私の頬に手を添えました。
「でも……やっぱり少しだけ面白くないから、私のこと先に抱いて、渉」
優しくねだるようなキスをされると、自然と顔が綻びます。彼女を引き寄せてから、テーブルの上にはしたなく仰向けに押し倒すと、彼女はじっと熱の篭った視線で私を見つめました。
「愛してます、心から」
「知ってる。……私も」
まさに据え膳状態の彼女に、私は素っ裸の心で手をつけます。何も飾らず触れるのは彼女だけ。それを彼女が何より確実に理解してくれていたことは、私にとって思っていたよりずっと幸福なことでした。
「へ?」
彼女の潔い回答に、思わず間抜けな声を出してしまいました。というのも、今回ばかりは怒鳴られるか、それでなくとも嫌な顔をされるだろうと予想していたからです。
私は、次のドラマの仕事で、所謂濡れ場というのものを演じるつもりでいます。交際中の彼女にそれを一切伝えないのも不誠実だろうと思って、殴られることも嫌がられることも覚悟でその話を切り出したのです、が。
「ほ……本当に、良いのですか? その……濡れ場ですよ? 意味わかってます?」
「しつこいな、わかってるよ。……嫌がって欲しかったの?」
彼女は読んでいた本を閉じ、真正面に私を見据えて軽く笑いました。それが皮肉ではなく、ただの微笑みのようでしたので、益々混乱してしまいます。
「いえ、その……普通、やはり嫌がられるものだろうと思っていたのです。今まで貴女にしか見せていなかった部分を曝け出すのですから……貴女からすれば、愉快ではないかと」
「ふふ……渉のえっちな顔がテレビでも見られるなんて贅沢。それにこんなに良い男が自分のものだなんて、これ以上幸せなことはないよ」
ねぇ、と彼女は少し甘えたような声を出して、私の手に自分の手を重ねました。どちらからともなく指を絡ませ、じっと見つめ合います。
「渉が誰とセックスしようが私には関係ないよ。だって渉は必ず私のもとへ帰ってくるでしょう。それに、貴方の心は私のところに置いてってくれるでしょ? だから、今更誰かに嫉妬したりしないよ」
「なまえ……貴女を見くびっていたようですね、すみません。その通りです。私は必ず貴女のもとへ帰って来ますし、私の魂はいつも貴女とともにありますよ」
私がそう答えると、彼女は満足そうににっこり笑いました。そして不意に身を乗り出して、テーブルに膝をつき、私の頬に手を添えました。
「でも……やっぱり少しだけ面白くないから、私のこと先に抱いて、渉」
優しくねだるようなキスをされると、自然と顔が綻びます。彼女を引き寄せてから、テーブルの上にはしたなく仰向けに押し倒すと、彼女はじっと熱の篭った視線で私を見つめました。
「愛してます、心から」
「知ってる。……私も」
まさに据え膳状態の彼女に、私は素っ裸の心で手をつけます。何も飾らず触れるのは彼女だけ。それを彼女が何より確実に理解してくれていたことは、私にとって思っていたよりずっと幸福なことでした。