真夜中、喉が渇いて目を覚ますと、隣で寝ていたはずの彼女がいなくなっていた。リビングへ行くと、暗がりの中、ソファで膝を抱える彼女を見つけた。

「なまえ? 何してんすか、こんな夜中に……」

くあ、とあくびをしながらソファに近付く。すると、すん、と彼女の啜り泣く声がきこえた。

「ごめん、なんでもないから……気にしないで」
「……そっすか」

振り向きさえしない彼女から離れ、キッチンへと足を向ける。冷蔵庫にあったインスタントのココアを取り出し、マグカップを並べてお湯を沸かす。温かいココアを二つとぽとぽといれて、再び彼女のもとへ戻った。

「どーぞ」
「……き、気にしないでいい、いいって、言ったのに……」
「そんな泣きじゃくりながら言われても。気にしますよ、恋人が泣いてんだから。……何かあったんすか?」

彼女は両手でマグカップを受け取り、また涙をぼろぼろと零した。薄暗がりの中でも、彼女の涙が輝いているように見えた。

「本当に……何にもないよ。ただ、眠れなくて……少し、不安になっただけ……」
「ふーん……まあ、夜に眠れないと不安になりますよね。それで一人で泣くなら、起こして欲しいっすけど」

彼女の隣に腰を下ろし、優しく肩を抱き寄せる。細い肩は少し冷えていた。真夜中にひとりきりで不安に苛まれるくらいなら、オレに縋ってくれればいいのに。

「……でも、ジュンくん、明日もお仕事だから……」
「こんくらい平気ですよ。あんたが素直に甘えてくれないほうが嫌です」

冷たくなった髪にキスをすると、彼女は少しだけ微笑んでくれた。そしてオレの胸元に擦り寄って、すんと小さく鼻をすする。

「ありがと、ジュンくん」
「いーえ。飲んであったまったら、一緒に寝ましょ」

甘ったるいココアが優しく彼女の涙を溶かしていく。

……こんなんであんたが安心してくれるなら、オレはいつだってあんたのためにココアをいれるのになぁ。