「ひーよりくん」
「なぁに?」

パタパタと身支度を整える恋人を、私はソファ越しにじいっと見つめていた。彼の髪や服が整えられていくたび、あぁもう行っちゃうのか、と少し寂しさが増していく。

「……日和くん〜」
「なーぁに?」

すっかり身支度を整え終えた日和くんは、困ったような顔をして私のとなりに腰掛けた。うん、今日もかっこいい。

「日和くん」
「うんうん。どうしたの、なまえちゃん?」

彼の暖かい手が、優しく私の横髪を耳にかける。その手に頬を預けると、彼はもちもちと私の頬を触った。

「わぁ、もちもちだね! 今朝はすっごく甘えんぼうさんだけど、どうかしたのかね?」
「……お仕事行っちゃうの?」

控えめに、もごもごと私がそう訊ねると、彼は少し驚いたように目を丸くした。それから彼は優しく微笑んで、親指で私の頬を撫でてきた。

「うん、行っちゃうね」
「……どうしても?」
「どうしてもだね」
「そっか……」

私がしょんぼりと肩を落とすと、日和くんは心底幸せそうに笑って両手で私の頭をもみくちゃにした。

「もう、どうしてそんなに可愛いの! そんなふうにされたらお仕事行きたくなくなっちゃうね!」
「うわっ、ちょ、日和くん……」

突然、パッと手を離され、額に軽いキスをされてしまった。日和くんはまた私の頭を撫でて、子供に言い聞かせるような甘い声で私を宥める。

「なるべく早く帰るから、良い子で待っててほしいね」
「……はぁい」
「うんうん、それじゃそろそろ行ってくるね。寂しくなったら連絡してねっ」

日和くんは立ち上がって、最後にもう一度キスをしてくれた。玄関先まで日和くんを見送って、ひとり、さっきまでふたりきりだった家で溜息を着く。

……あーあ、早く帰ってこないかなぁ。