最近よく、お昼にトマトジュースを買って飲んでいる。完全に無意識だったのだけれど、つい先日、その理由に気付いた。

(あ、朔間さん)

今ちょうど撮影中のドラマで、相手役を演じている朔間零さん。彼の瞳を見ていると、何となく、トマトジュースを思い出して喉が渇くのだ。彼の瞳はまさに血のように紅い。けれど血と言うよりはトマト、のような気がする。

 ジュウ、とパックのトマトジュースを飲み干して、サンドイッチに手を伸ばす。すると不意に隣へ例の彼が腰掛けた。

「どっこらせ。おや、美味しそうなものを飲んでるんじゃな」
「お疲れさまです。トマトジュース、好きですか?」

朔間さんはにっこり綺麗に笑って頷く。おじいちゃんみたいな口調のわりに、ふとした挙動は何となく幼げだ。そして黙っていると格好良い。彼がどんな人なのか推測しようとしても、ゆらゆらと偶像が揺れ動くばかりでちっとも掴めそうになかった。

「我輩、吸血鬼じゃから。トマトジュースが大好物なんじゃよ」
「へ〜……美味しいですもんね、トマトジュース」
「う、うむ」

 サンドイッチをもぐもぐと口にしながら、何か掴めないだろうかと朔間さんをじっと観察する。

手が思っていたより大きくて、指先まで彫刻のように美しい。少し癖毛の黒い髪は、艶があって綺麗な夜空みたいだ。しかしどれだけ観察していても、美しいひとだということしかわからなかった。

「お〜い。そんなに見つめられると困っちゃうんじゃが……何かついておるかや?」
「あ、ごめんなさい。綺麗だったから、つい」
「素直な子じゃのう」

 苦笑する彼の、その紅い瞳を間近で覗き込む。彼は一瞬驚いたように目を見開いた。

「……ふふ、やっぱりトマトみたい。朔間さんの目、美味しそうで好きです」

もう一本トマトジュースを買ってこようかな……と、そんなことを考えて目線を外し、最後になったサンドイッチを手に取った。ふと彼のほうを見ると、その滑らかな白い肌までもがトマトみたいに真っ赤になっていた。

「朔間さん、大丈夫ですか?」
「反則じゃ〜……しくしく」

 やっぱり何を考えているかわからない。でもこうして真っ赤になって頭を抱えているのは、なんだか可愛らしく感じた。

朔間さんは掴みどころのない不思議な人だけど、今のところは「可愛い人」だと覚えておこう。