家に帰ると恋人がリビングで倒れていた。
否、リビングのラグの上に寝そべってすやすやと眠っていた。身体を丸めてまるで猫みたいに眠っているものだから、つい写真におさめてしまった。

 もう初夏とはいえ、半袖短パンでお腹を出して眠るには早すぎる。窓も開けっ放しだし、きっと寒くて身体を丸めているんだろう。とりあえず窓を閉めてブランケットをかけてやった。

しかし起こそうか起こすまいか迷うなあ。このままベッドに運んでやるべきか、それとも起こしてやるべきか。迷いながら彼女の傍にしゃがみこんで、じいっとその寝顔を見つめた。

 もにょもにょと動く小さなくちもとは、なんだか機嫌良さげに笑っているように見える。試しに手のひらに人差し指を添えてみると、赤ん坊みたいにきゅっと握りしめてきた。胸いっぱいに込み上げる愛おしさに頭を抱えながら、彼女を見つめる。

「……こういうのは据え膳って言うのかなあ?」

こっそり独り言を呟き、彼女の頬に触れた。起きる気配はない。そのまま彼女の頭の横に手をついて、そっと触れるだけのキスをしてみる。

「……ん〜」

 ぐずるようなか細い声。起きるだろうかと見つめるけれど、やはりその瞼が開かれることはない。

「起きないのかあ?」

頬を指先でつついてみても、彼女は起きない。起きないなら仕方ない。白い首筋に唇を当てて、数箇所痕を残す。その先は……流石にしなかった。起きているときにしたほうが反応があって楽しいだろうから。もう一度キスをして離れようとすると、不意に手を掴まれた。

「おっと。起きてたのかあ?」
「……」

 しかし返事はない。どうやら無意識らしい。弱い力で俺の腕を抱き寄せ、満足そうに笑っている。

「う〜ん……俺の負けかなあ」

起こすこともベッドに運ぶことも諦めて、彼女の隣にごろんと寝そべる。起きたら身体が痛いかもしれないなあ……と呑気なことを考えながらしばらく彼女の寝顔を見つめて、そっと目を閉じた。