無駄な時間
「ふぃ〜……帰ったぞい、すまぬがタオルを取ってくれぬかや?」
雨の中濡れて帰宅し、奥にいる恋人に声をかける。はーい、と軽快な返事の後、彼女はタオルを持って玄関まで駆けつけてきてくれた。そして背伸びをして俺の頭にタオルを被せ、にこっと優しく微笑む。
「おかえりなさい、大変だったね」
「……うむ、ただいま、なまえ。風呂はもう済ませたのかや?」
「んや、ご飯作ってたからまだ……んひゃっ!?」
服も濡れたままのくせに、彼女が濡れてしまうのも構わず抱き締めた。案の定彼女の服までじわりと濡れてしまう。
「あったかいのう」
「……よしよし」
彼女は軽く溜め息をついてから、仕方なさげに俺の頭を撫でた。甘えるようにその肩口に頭を擦り寄せて、首すじにキスをする。
「零ちゃんお風呂に行きたいんじゃけど」
「ん、ご飯の用意しとくから入っておいで」
「嫌じゃ〜、今日は一緒に入るのじゃ!」
「なに、今日はそういうキャラなの? 可愛いねぇ零ちゃん、よしよし」
バカみて〜にわざとらしく甘えても、彼女は笑って受け止めてくれる。それに、俺が何かわがままを言うと大抵はそれを叶えてくれる。要するに彼女は俺に甘いのだ。
「じゃあ先に入ってて、私も後から入るから」
「……後から絶対来るんじゃな?」
「うん、ほら、早く。身体冷やしちゃうよ」
「むぅ……来なかったら風呂から出ないからの」
彼女に促されるまま脱衣所に行って、そのままさっさと風呂に入る。俺がシャンプーとトリートメントを済ませたあたりで、彼女が恐る恐る中に入ってきた。
「お、ちゃんと自分で洗えて偉いね」
「うむ。ご褒美をもらおうかの」
彼女を抱き寄せてキスをすると、彼女は恥ずかしそうに顔を赤くして目を逸らす。散々お互いの身体を見て触ってきたのに、今さら何を恥ずかしがっているのか。
「フフ、可愛いのう」
「もう……」
「今日は我輩が洗ってやろうぞ。ほれ、座った座った♪」
「はいはい」
シャワーチェアに彼女を座らせて、シャワーを浴びせ、丁寧にシャンプーをする。何となく彼女の頭のほうが小さく感じるのは気のせいだろうか。ちょっと力を入れたらベコっと凹んでしまいそうだ。いや、そんなに脆くはないと思うが。
「零の手、おっきいね。なんかお父さんみたいで安心する」
「パパと呼んでも構わんぞい、と言いたいところじゃけど……もしそうなるなら我輩もお主をママと呼びたいところじゃな」
「うーん、それは〜……なんか、違くないですかね」
「何がじゃ、ママ?」
くだらないふざけた会話を続けながら、シャンプーを洗い流してトリートメントをつける。一本一本に染み込むように、丁寧に丁寧に、彼女の髪を撫でた。
「子ども欲しいの?」
「んっ、あぁいや、そうじゃな……うーん……まだ良いかのう。もう少し二人っきりで……お主を独占しておきたいからの」
「ふふ、そっか。私もまだ零のことひとりじめしてたいな」
「……うん」
――子どもをつくるのは、正直不安だ。……というか、作ってしまっていいのだろうかとさえ思う。でも俺がつくらなきゃ凛月に迷惑がかかるかもしれね〜し、きっと彼女だって俺の親族から何か余計なことを言われたりするんだろう。
でもそういう煩わしいことを抜きにして考えても、いつかもう少し彼女を独占したら、きっと彼女と俺の子が欲しくなると思う。今はいらね〜けど。
「でもいつか、生みたいな。零に似た赤ちゃんを育てたい。女の子でも男の子でもいいけど、零に似たら絶対美人さんになるよ」
楽しげに明るく話す彼女を見て、胸が締め付けられる。きっとお互い同じような気持ちでいるんだろう、とそう思うだけで胸がいっぱいになった。トリートメントを流してから、一度シャワーを置いて後ろから彼女を抱きしめる。
「どしたの」
「う〜ん……」
「ふふ、くすぐったい。今日は甘えんぼだね〜」
「うむ」
濡れた素肌をぴったりくっつけて、彼女の柔らかな肌の下から伝わる心音に耳を傾ける。それだけで簡単に幸福を感じられるから、今はそれでいい。
「零。のぼせちゃうよ」
「……うむ」
「聞いてる?」
「聞いておるよ。うむ、さっさと洗って上がって夕飯にしようかの」
名残惜しさは感じつつも大人しく身体を離す。彼女はちらりとこちらを振り向くと、計算づくなのか上目遣いで恐る恐る俺の腕に触れた。
「ご飯食べたら、もうちょっとゆっくりしたいな」
「ゆっくり……何をしたいんじゃ?」
「……色々」
「フフ、それは待ち遠しいのう」
軽いリップ音とともに彼女の額にキスをして頭を撫でる。ああ、やっぱり今はまだこのままでいい。このままがいい。ゆっくり時間を浪費するような、そういうくだらね〜やりとりがずっと続いてくれれば、それだけで。
雨の中濡れて帰宅し、奥にいる恋人に声をかける。はーい、と軽快な返事の後、彼女はタオルを持って玄関まで駆けつけてきてくれた。そして背伸びをして俺の頭にタオルを被せ、にこっと優しく微笑む。
「おかえりなさい、大変だったね」
「……うむ、ただいま、なまえ。風呂はもう済ませたのかや?」
「んや、ご飯作ってたからまだ……んひゃっ!?」
服も濡れたままのくせに、彼女が濡れてしまうのも構わず抱き締めた。案の定彼女の服までじわりと濡れてしまう。
「あったかいのう」
「……よしよし」
彼女は軽く溜め息をついてから、仕方なさげに俺の頭を撫でた。甘えるようにその肩口に頭を擦り寄せて、首すじにキスをする。
「零ちゃんお風呂に行きたいんじゃけど」
「ん、ご飯の用意しとくから入っておいで」
「嫌じゃ〜、今日は一緒に入るのじゃ!」
「なに、今日はそういうキャラなの? 可愛いねぇ零ちゃん、よしよし」
バカみて〜にわざとらしく甘えても、彼女は笑って受け止めてくれる。それに、俺が何かわがままを言うと大抵はそれを叶えてくれる。要するに彼女は俺に甘いのだ。
「じゃあ先に入ってて、私も後から入るから」
「……後から絶対来るんじゃな?」
「うん、ほら、早く。身体冷やしちゃうよ」
「むぅ……来なかったら風呂から出ないからの」
彼女に促されるまま脱衣所に行って、そのままさっさと風呂に入る。俺がシャンプーとトリートメントを済ませたあたりで、彼女が恐る恐る中に入ってきた。
「お、ちゃんと自分で洗えて偉いね」
「うむ。ご褒美をもらおうかの」
彼女を抱き寄せてキスをすると、彼女は恥ずかしそうに顔を赤くして目を逸らす。散々お互いの身体を見て触ってきたのに、今さら何を恥ずかしがっているのか。
「フフ、可愛いのう」
「もう……」
「今日は我輩が洗ってやろうぞ。ほれ、座った座った♪」
「はいはい」
シャワーチェアに彼女を座らせて、シャワーを浴びせ、丁寧にシャンプーをする。何となく彼女の頭のほうが小さく感じるのは気のせいだろうか。ちょっと力を入れたらベコっと凹んでしまいそうだ。いや、そんなに脆くはないと思うが。
「零の手、おっきいね。なんかお父さんみたいで安心する」
「パパと呼んでも構わんぞい、と言いたいところじゃけど……もしそうなるなら我輩もお主をママと呼びたいところじゃな」
「うーん、それは〜……なんか、違くないですかね」
「何がじゃ、ママ?」
くだらないふざけた会話を続けながら、シャンプーを洗い流してトリートメントをつける。一本一本に染み込むように、丁寧に丁寧に、彼女の髪を撫でた。
「子ども欲しいの?」
「んっ、あぁいや、そうじゃな……うーん……まだ良いかのう。もう少し二人っきりで……お主を独占しておきたいからの」
「ふふ、そっか。私もまだ零のことひとりじめしてたいな」
「……うん」
――子どもをつくるのは、正直不安だ。……というか、作ってしまっていいのだろうかとさえ思う。でも俺がつくらなきゃ凛月に迷惑がかかるかもしれね〜し、きっと彼女だって俺の親族から何か余計なことを言われたりするんだろう。
でもそういう煩わしいことを抜きにして考えても、いつかもう少し彼女を独占したら、きっと彼女と俺の子が欲しくなると思う。今はいらね〜けど。
「でもいつか、生みたいな。零に似た赤ちゃんを育てたい。女の子でも男の子でもいいけど、零に似たら絶対美人さんになるよ」
楽しげに明るく話す彼女を見て、胸が締め付けられる。きっとお互い同じような気持ちでいるんだろう、とそう思うだけで胸がいっぱいになった。トリートメントを流してから、一度シャワーを置いて後ろから彼女を抱きしめる。
「どしたの」
「う〜ん……」
「ふふ、くすぐったい。今日は甘えんぼだね〜」
「うむ」
濡れた素肌をぴったりくっつけて、彼女の柔らかな肌の下から伝わる心音に耳を傾ける。それだけで簡単に幸福を感じられるから、今はそれでいい。
「零。のぼせちゃうよ」
「……うむ」
「聞いてる?」
「聞いておるよ。うむ、さっさと洗って上がって夕飯にしようかの」
名残惜しさは感じつつも大人しく身体を離す。彼女はちらりとこちらを振り向くと、計算づくなのか上目遣いで恐る恐る俺の腕に触れた。
「ご飯食べたら、もうちょっとゆっくりしたいな」
「ゆっくり……何をしたいんじゃ?」
「……色々」
「フフ、それは待ち遠しいのう」
軽いリップ音とともに彼女の額にキスをして頭を撫でる。ああ、やっぱり今はまだこのままでいい。このままがいい。ゆっくり時間を浪費するような、そういうくだらね〜やりとりがずっと続いてくれれば、それだけで。