「愛してます、零さん」

真剣な眼差しと声音に、思わず口もとが緩みそうになった。歯を食いしばって何とか耐え、さも余裕だと言わんばかりに目を細めてみせる。

「うむ、我輩も愛しておるぞい」
「……っ、顔……! ずるい……!」

彼女は頬を赤くして顔を背ける。今行なった「愛してる」ゲームは、お互いに愛してると言い合って照れたほうが負け……というゲームらしい。暇だとこぼすと彼女からそんなゲームを持ちかけられのだが、これは単なる暇潰しゲームなのだろうか。

「というか、名前呼びは反則じゃないかのう?」
「ハンデですよハンデ。朔間さんは顔がかっこいいぶん有利ですから」
「釈然とせんのう。……我輩もゲームにかこつけて名前を呼びたいんじゃけど」
「…………もう一回やりますか?」
「うむ♪」

肩は触れない程度の距離。彼女の手がすぐそこにあるのに、それに自分の手を重ねていい関係ではない。それなのに真剣に愛を囁き合うなんて、何となく歪だ。

「ごほん。……愛してますよ、零さん」
「……愛してる、なまえ」
「え、」

一瞬の隙をついて彼女の、手には手を、唇には唇を重ねた。唇を離して、まだ睫毛が触れるくらいの距離のままニヤリと口角を上げる。

「愛しておるよ」
「に……二回も言った、」
「うむ、ゲームじゃないからのう」
「ずるすぎる……」

ぽぽ、と真っ赤になってしまう彼女が顔をうつむける。そのつむじにそっとキスをして、よしよしと頭を撫でた。

「まぁ、負けは負けじゃ。罰として本気で愛を囁いてもらおうかの♪」
「……さっきからずっと本気で言ってましたけど」
「うむ、それでも聞きたいのじゃ」

頭を撫でる手を下ろし、彼女の顎をついと上げさせる。真っ直ぐ見つめあった瞳が微かに揺れる。

「…………あ、愛してます……」
「うむ。我輩もじゃ」

もう一度キスをして、くすくす笑う。存外面白いゲームだったが、しかし二人とも本気だったなら最初からゲームとしては成立していなかったのかもしれない。