冷静に対応?
頭がぼうっとする。身体が重い。視界は上手く定まらなくて、足ももつれて上手く歩けない。そんな最悪の状態で何とか無事に家まで帰ってこられたのは奇跡に近かった。
「た、……ただいま、ぁ」
思ったより甘く上擦った声に、自分でも吐き気をおぼえる。いや、丁度いい。このままトイレで全部吐き出してしまおう。そうすればきっと、先程飲み会の席で盛られた何かしらの薬も出ていってくれるだろう。
「おかえりなさいまし。随分遅かったですね」
「んぇ、ゆ、っゆづる……? なんで、」
「ふふ、サプライズでございます。明日もお休みをいただきましたので、貴女の顔を見たくて参りました、が……」
弓弦は玄関口から動かない私に近付いて、私の額に手を当てる。冷たい手のひらが気持ちいい。
「……何か、薬品を盛られたようですね。まったく、そういうときくらい私に連絡を寄越してくださいまし。貴女の身に何かあったらと思うと気が気でなりません」
「うん……ごめんね、頭、回んなくって」
「ええ、そうでしょうね。見たところ催淫剤の類いのようですし……歩けますか?」
「うん、何とか」
ふらふらと彼の腕に掴まったまま歩く。ぼんやりと熱に浮かされた頭でも、どこかで期待していた。このままベッドに行って、この薬が治まるまで彼がそういうことに付き合ってくれるのではないかと。
しかし連れられた先はトイレだった。
「まずはこちらを」
「え? うん……」
コップ一杯の牛乳を渡され、何とかごくごくと飲み干す。彼はコップを受け取ると、私を便座の前に座らせた。
「吐けますか?」
「えっ、あぁ、う、うん……」
結構冷静な対応だな、と肩を落として便座に向かう。けれど案外嘔吐って難しいもので、中々吐こうとしても吐けない。
「……む、むり、かも」
「わかりました。では失礼致します」
「んぐっ!?」
突然彼は手を私の口に突っ込んで、奥の方に触れた。反射的にえずき、そのまま無事胃の中のものも全部吐き出すことができた。
「っう、……ふぅ、う〜……」
「よくできましたね。口をゆすぎましょうか」
「……」
好きな人に無理やり嘔吐を促されて、挙句吐く姿を見られるというのは、なんともいたたまれないものだ。彼はトイレを流すと私を洗面所に連れていき、変な味のする口を水でゆすぐよう促す。
一連の毒抜きが終わると、私の身体の火照りもすっかりどこかへ消えてしまっていた。助かったけれどなんというか、思っていたのと違う。
「ありがとね、弓弦。もう大丈夫……なんか汚いことさせちゃってごめんね」
「汚いなどと。愛する人のものでしたらどうともありませんよ。ではベッドに行きましょうか?」
「あ、寝る? 弓弦、先に寝てて良いよ。私はお風呂先に入ろうかな」
ふぅ、と溜め息をついてそう言うと、思わぬ力で腕を掴まれた。ぎょっとして彼を見れば、いつも通りの穏やかな微笑みにほんの少し男らしさを滲ませてこちらを見つめていた。
「全て言葉にしなければ、察していただけませんか?」
「え……っ、な、なんで、だってさっき私そういう感じだったのに無反応だったじゃん……」
「無反応ではありませんよ。ただ、他の男性に盛られた薬がある状態で致すのが癪だっただけでございます。それで、今夜はいかがいたしましょう?」
「……よ、よろしくお願いします……」
「かしこまりました」
彼は心做しか満足そうに笑って、私を軽々持ち上げ寝室へ向かった。どうやら私は彼について、まだまだ知らないことが多いみたいだ。
「た、……ただいま、ぁ」
思ったより甘く上擦った声に、自分でも吐き気をおぼえる。いや、丁度いい。このままトイレで全部吐き出してしまおう。そうすればきっと、先程飲み会の席で盛られた何かしらの薬も出ていってくれるだろう。
「おかえりなさいまし。随分遅かったですね」
「んぇ、ゆ、っゆづる……? なんで、」
「ふふ、サプライズでございます。明日もお休みをいただきましたので、貴女の顔を見たくて参りました、が……」
弓弦は玄関口から動かない私に近付いて、私の額に手を当てる。冷たい手のひらが気持ちいい。
「……何か、薬品を盛られたようですね。まったく、そういうときくらい私に連絡を寄越してくださいまし。貴女の身に何かあったらと思うと気が気でなりません」
「うん……ごめんね、頭、回んなくって」
「ええ、そうでしょうね。見たところ催淫剤の類いのようですし……歩けますか?」
「うん、何とか」
ふらふらと彼の腕に掴まったまま歩く。ぼんやりと熱に浮かされた頭でも、どこかで期待していた。このままベッドに行って、この薬が治まるまで彼がそういうことに付き合ってくれるのではないかと。
しかし連れられた先はトイレだった。
「まずはこちらを」
「え? うん……」
コップ一杯の牛乳を渡され、何とかごくごくと飲み干す。彼はコップを受け取ると、私を便座の前に座らせた。
「吐けますか?」
「えっ、あぁ、う、うん……」
結構冷静な対応だな、と肩を落として便座に向かう。けれど案外嘔吐って難しいもので、中々吐こうとしても吐けない。
「……む、むり、かも」
「わかりました。では失礼致します」
「んぐっ!?」
突然彼は手を私の口に突っ込んで、奥の方に触れた。反射的にえずき、そのまま無事胃の中のものも全部吐き出すことができた。
「っう、……ふぅ、う〜……」
「よくできましたね。口をゆすぎましょうか」
「……」
好きな人に無理やり嘔吐を促されて、挙句吐く姿を見られるというのは、なんともいたたまれないものだ。彼はトイレを流すと私を洗面所に連れていき、変な味のする口を水でゆすぐよう促す。
一連の毒抜きが終わると、私の身体の火照りもすっかりどこかへ消えてしまっていた。助かったけれどなんというか、思っていたのと違う。
「ありがとね、弓弦。もう大丈夫……なんか汚いことさせちゃってごめんね」
「汚いなどと。愛する人のものでしたらどうともありませんよ。ではベッドに行きましょうか?」
「あ、寝る? 弓弦、先に寝てて良いよ。私はお風呂先に入ろうかな」
ふぅ、と溜め息をついてそう言うと、思わぬ力で腕を掴まれた。ぎょっとして彼を見れば、いつも通りの穏やかな微笑みにほんの少し男らしさを滲ませてこちらを見つめていた。
「全て言葉にしなければ、察していただけませんか?」
「え……っ、な、なんで、だってさっき私そういう感じだったのに無反応だったじゃん……」
「無反応ではありませんよ。ただ、他の男性に盛られた薬がある状態で致すのが癪だっただけでございます。それで、今夜はいかがいたしましょう?」
「……よ、よろしくお願いします……」
「かしこまりました」
彼は心做しか満足そうに笑って、私を軽々持ち上げ寝室へ向かった。どうやら私は彼について、まだまだ知らないことが多いみたいだ。