今日は雲ひとつない快晴の日。カーテンを開けて部屋いっぱいに太陽の柔らかな日差しを取り込む。朝の支度を踊るような心地で済ませたら、新品の服に袖を通して家を出る。今日は久しぶりのデートの日。

 予定より少し早い時間に待ち合わせ場所へ行くと、きちんと変装をしたジュンくんを見つけた。今でも約束の時間の十五分前なのに、一体何時から待ってくれていたのだろう。私が駆け寄って行くと、ジュンくんは私に気付いて困ったように照れるように笑った。

「そんなに焦らなくてもオレは逃げませんよぉ?」
「っうん、でも待たせちゃったかなって思って」
「全然。楽しみすぎて早く着いちまっただけですから……つっても今でも充分早いですけどね」
「私も、すっごく楽しみだったから」

 息を整えながらそう言うと、ジュンくんは何気なく私の手を握った。久しぶりに触れた手は私よりも男の子らしくて大きい。指を絡めて手を繋ぎ直したら、一緒の方向を向いて歩き出す。

「でも珍しいっすね、水族館に行きたい〜なんて。魚、好きでしたっけ?」
「ん〜……食べるのは好きだよ。でも水族館ってあんまり行ったことないなあって思って。あとすごいデートって感じするから、それで」
「なるほど。じゃあ夜は寿司ですかねぇ」
「ふふ、そうしよっか」

 そんな他愛もない会話をしながら、電車に乗って水族館を目指す。ずっと手を繋いでいるだけで、隣にジュンくんがいるだけで、会話のない車内でもなぜだか幸せで楽しくて胸がいっぱいになった。

 平日ということもあって、水族館はかなり空いていた。二人して遠足に来た子どもみたいにはしゃいで、タオルもないくせにイルカショーを最前列で見たり、お揃いのキーホルダーを買ったりした。

「あはは、びしょびしょになっちゃったね」
「濡れるっつってもこんなにびしょびしょになっちまうとは……はい、タオル買ってきましたから」
「あ、ごめんね、ありがと」
「……なんか、ガキくせぇっすね。でもこういうのもあんたとなら楽しいかも」

 ジュンくんは新品のタオルで私の濡れた頭を拭きながら無邪気に笑った。本当に子どもっぽい幼稚なデートだと思うけど、それでもこんなに楽しいのは、ジュンくんが一緒にいてくれているからなんだろう。

「私も、ジュンくんと一緒だからすっごく楽しいよ」
「……うん。やっぱ夜、寿司は無しにしていいっすか? 早く帰ってあんたのこと独り占めしたいんですけど」

周りに人がいないのを確認して、ジュンくんはこつんと私の額に自分の額を合わせた。心臓がどきどきと高鳴る。

「うん、独り占め、していいよ」

 小さな声で、目線は合わせられずに頷く。するとジュンくんはぎゅうっと私を抱き締めて、耳もとで嬉しそうに笑った。

「んじゃ、身体冷やすとまずいですし、今日は帰りますか」
「うんっ、また来ようね」
「もちろんっすよ」

 手を握り直して、二人で同じ家に帰る。帰り道、夕焼けの差し込む車内は静かだったけれど、やっぱり幸せで幸せで仕方なかった。