いつもと違うこと
「薫くん! 見て見て!」
「わっ、なになに、どうしたの?」
お風呂から上がると、何やらうきうきしている彼女に腕を引っ張られた。大人しく着いていくと、テーブルの上に高そうな梱包のチョコを見つけた。
有名なブランドの割と高いやつだ。別に今日はバレンタインでもホワイトデーでもないけれど、一体どうしたんだろう。
「わ〜、美味しそう。貰いもの?」
「うんっ、友だちがくれたの。可愛いし美味しそうだから薫くんとわけっこしようと思って」
「俺も食べちゃっていいの?」
「もちろん。はい、あーん」
何気なくチョコを目の前に突き出されて一瞬迷ったけれど、まぁ恋人だしそんなに気構えるのもカッコ悪いかな、と思って大人しく口を開けチョコを貰った。チョコは確かに美味しかったけれど、今は彼女が食べさせてくれたことの嬉しさのほうが大きい。
「んん、美味しいね」
「ほんと? どれ食べようかなぁ」
「ん〜……じゃあこれ。はい、あーん♪」
さっき彼女がしたのと同じように、チョコを一粒取って彼女の前に差し出す。彼女ははにかみ笑い、口を開けて俺の手からチョコを食べた。なんだか小動物の餌付けみたいで楽しい。
「ん! おいひい! えっなにこれ?」
「なにってチョコでしょ」
彼女の無邪気な反応に笑いながら、一緒に梱包されていたらしい商品説明の紙を広げる。中にリキュールが入っているものや、アーモンドが混ざってるの、ミルクチョコにホワイトチョコ……全部で六粒のチョコが詰め合わせられているらしい。
「ねぇねぇ、薫くん」
「ん?」
紙面から顔を上げて彼女のほうを見ると、彼女は直方体のチョコの端をくわえて俺のほうを見ていた。そのきらきらした目が何を求めているのかなんて、察せないほど鈍くない。
差し出されたチョコの端を口に含んで、キスをするようにチョコを食べる。どろりと熱で溶けるチョコは、もう味なんてろくにわからない。
「…………ふふ、美味しいね」
チョコが溶けきって口を離すと、彼女は嬉しそうに笑った。その唇についたチョコを指で拭い、ちらりとあと三粒残ったケースに目をやる。
「美味しいけど、俺、これだと安いのでも幸せになっちゃうからちょっともったいないかもね」
「じゃあ普通に食べたい?」
「……まあ、そう聞かれると、ね。俺はイチャイチャさせてほしいよ」
「良かった」
いたずらっぽく笑う彼女は、白い指先でチョコをつまんだ。チョコがなくなっても、キスはいくらでもできる。それでも何かと理由をこじつけて、普段とは違う特別を彼女と共有したい。あと、三回だけ。
「わっ、なになに、どうしたの?」
お風呂から上がると、何やらうきうきしている彼女に腕を引っ張られた。大人しく着いていくと、テーブルの上に高そうな梱包のチョコを見つけた。
有名なブランドの割と高いやつだ。別に今日はバレンタインでもホワイトデーでもないけれど、一体どうしたんだろう。
「わ〜、美味しそう。貰いもの?」
「うんっ、友だちがくれたの。可愛いし美味しそうだから薫くんとわけっこしようと思って」
「俺も食べちゃっていいの?」
「もちろん。はい、あーん」
何気なくチョコを目の前に突き出されて一瞬迷ったけれど、まぁ恋人だしそんなに気構えるのもカッコ悪いかな、と思って大人しく口を開けチョコを貰った。チョコは確かに美味しかったけれど、今は彼女が食べさせてくれたことの嬉しさのほうが大きい。
「んん、美味しいね」
「ほんと? どれ食べようかなぁ」
「ん〜……じゃあこれ。はい、あーん♪」
さっき彼女がしたのと同じように、チョコを一粒取って彼女の前に差し出す。彼女ははにかみ笑い、口を開けて俺の手からチョコを食べた。なんだか小動物の餌付けみたいで楽しい。
「ん! おいひい! えっなにこれ?」
「なにってチョコでしょ」
彼女の無邪気な反応に笑いながら、一緒に梱包されていたらしい商品説明の紙を広げる。中にリキュールが入っているものや、アーモンドが混ざってるの、ミルクチョコにホワイトチョコ……全部で六粒のチョコが詰め合わせられているらしい。
「ねぇねぇ、薫くん」
「ん?」
紙面から顔を上げて彼女のほうを見ると、彼女は直方体のチョコの端をくわえて俺のほうを見ていた。そのきらきらした目が何を求めているのかなんて、察せないほど鈍くない。
差し出されたチョコの端を口に含んで、キスをするようにチョコを食べる。どろりと熱で溶けるチョコは、もう味なんてろくにわからない。
「…………ふふ、美味しいね」
チョコが溶けきって口を離すと、彼女は嬉しそうに笑った。その唇についたチョコを指で拭い、ちらりとあと三粒残ったケースに目をやる。
「美味しいけど、俺、これだと安いのでも幸せになっちゃうからちょっともったいないかもね」
「じゃあ普通に食べたい?」
「……まあ、そう聞かれると、ね。俺はイチャイチャさせてほしいよ」
「良かった」
いたずらっぽく笑う彼女は、白い指先でチョコをつまんだ。チョコがなくなっても、キスはいくらでもできる。それでも何かと理由をこじつけて、普段とは違う特別を彼女と共有したい。あと、三回だけ。