じ、っと。真剣な眼差しが私を見つめる。けれどそれは正確に言うと「私」を見ているのではなくて、私の肌や、目や鼻や口、そういう物理的な外見を見ているに過ぎない。それでも彼に見つめられるのが嬉しくて、私は黙って間近にいる彼のすべてを目に焼きつける。

「……昨日はまた夜更かしをしたのだね。肌の調子が良くないよ、まったく、影片といい君といいどうしてそう管理がずさんなのか……」
「ふふ、ごめんなさい」
「何を笑っているのかね」
「ううん、なんでもないの」

 本当は、昨晩はわざと夜更かしをした。少し粗があるほうが長い時間見つめてもらえると思ったから。でもそんなこと言って呆れられたくないから、誤魔化すように笑った。

「いい加減自分で化粧を覚えたまえ……と言いたいところだが、君は中々に不器用だからね。今後も全て僕に任せるといい」
「本当? 宗くんがずっとやってくれるの?」
「何か不満でもあるのかね?」
「ううん、すっごく嬉しい」

 柔らかなブラシの感触が頬を撫でる。目を瞑るとブラシが離れくちびるに優しい感触がした。

「っえ、」
「……心配しなくてもちゃんと面倒を見てあげるから、わざと夜更かしするのはやめたまえ」
「……えへ、バレてた……?」
「君は本当にわかりやすいからね」

彼はそう言ってほんの少しだけ笑った。困ったような咎めるような口調だったけれど、優しくて柔らかな声色だった。

「それに僕は君が思うより、君をちゃんと見ているからね。何を考えているかくらいお見通しなのだよ」
「わ、もういい、もういいです、これ以上聞いたら幸せで死んじゃう」
「人はそう簡単には死なないのだよ。安心して幸福を享受するといい。……ほら、続きをするから前を向いて目を瞑りたまえ」
「はい……」

 熱い顔のまま前を向いて目を瞑るけれど、どうしても口角が上がってしまう。宗くんはそんな私を見てくすりと微笑み、ぽんぽんと頭を撫でてくれた。

人は簡単には死なない。確かにそれは真実だけれど、今の私はあんまり幸せで本当にこのまま死んじゃいそうなんだ。でもきっとそれも、彼はわかってくれているのだろう。