だらだら。
午後、ゆるやかに時間が過ぎていく昼下がり。レースカーテンを通り抜けて差し込む春の日差しを浴びながら、ソファに腰掛けぼんやりと本を読んでいた。文章は映像にならず、ただ紙面の文字を滑るように読んでいく。つまるところ、内容なんてあんまり理解していなかった。
「ふあ〜ぁ……おや、読書中かや?」
寝室から起きてきた彼は、私を見ると長さの割に小さな歩幅で歩み寄り、私の隣に腰掛けて肩に頭を預けてきた。本を閉じて彼のくせっ毛を撫でてみる。
「ううん、暇だったから見てただけだよ」
「ふぅん」
「何か食べる?」
「いや、良い。もうちょっとこのまま……」
彼はうとうとと微睡みながら、猫みたいに私の首もとに頭を擦り寄せる。その手に触れてみるけれど、彼が寝起きだからなのか私が暖まっていたからなのか、ひやりと氷のように冷たかった。
温めるように指を絡めて手を握る。血行を良くしてやろうと手を揉んでやると、ぴくりと手が動いた。
「……ン、手……」
「あ、ごめん。くすぐったかった?」
「いや……」
まだ夢の中にいるみたいな、ぼんやりした声だった。零は顔を上げると、蕩けた瞳を細めて私を見つめる。
「あったかくて、やわっこいのう」
「……零の手はおっきくて、綺麗だね」
「お主が小さいんじゃよ」
「そうかなあ」
続けてマッサージをしていると、彼の手がぐるりと私の手を捕まえてしまった。
「ほれ、すっぽり入っちゃうぞい」
「ほんとだ」
「……えいっ」
「うわ、」
手を押さえつけて、突然零は私をソファに押し倒すようにのしかかってきた。見上げた彼は思っていたより寝癖がついていて、なんだか可愛かった。繋いでいないほうの手を伸ばして髪を撫でるけれど、手が離れるとすぐにぴょんと跳ねてしまう。
「ふふ、可愛い」
「……うむ、可愛いのう。陽射しがきらきら反射して、目が眩むくらいじゃ」
彼のまだ冷たい指先が私の髪に触れる。彼の黒檀のようなくせ毛も、光を浴びてきらきら光っていた。透き通った瞳孔にはやさしい愛情が隠れている。
「じゃあ、目、閉じていいよ」
その首に腕を回して引き寄せ、瞼とくちびるに順番にキスをした。
「……まだ昼なのはわかってるんじゃけど、今のはお主が悪くないかのう」
「あ、だめ。お昼ご飯まだ食べてないから」
「しくしく……生殺しじゃ〜」
彼が手のひらを私のデコルテに当てたから、パッとそれを振り払って笑った。お腹が空いてる状態でお昼からするのは嫌だ。彼は大人しく諦めて体を起こし、しくしくと泣き真似をしてみせる。
「何食べたい?」
「え? お主じゃけど」
「はいはい、それは後でね」
「言質は取ったぞい」
くだらない言葉を交わして、贅沢に過ぎていく時間を浪費する。陽射しだけが差し込む薄暗い部屋で、彼は幸せそうに笑っていた。
何にも特別なことがなくたって、穏やかな今はきっと一番満たされているに違いない。彼の微笑みを見ていると自然とそう思えた。
「ふあ〜ぁ……おや、読書中かや?」
寝室から起きてきた彼は、私を見ると長さの割に小さな歩幅で歩み寄り、私の隣に腰掛けて肩に頭を預けてきた。本を閉じて彼のくせっ毛を撫でてみる。
「ううん、暇だったから見てただけだよ」
「ふぅん」
「何か食べる?」
「いや、良い。もうちょっとこのまま……」
彼はうとうとと微睡みながら、猫みたいに私の首もとに頭を擦り寄せる。その手に触れてみるけれど、彼が寝起きだからなのか私が暖まっていたからなのか、ひやりと氷のように冷たかった。
温めるように指を絡めて手を握る。血行を良くしてやろうと手を揉んでやると、ぴくりと手が動いた。
「……ン、手……」
「あ、ごめん。くすぐったかった?」
「いや……」
まだ夢の中にいるみたいな、ぼんやりした声だった。零は顔を上げると、蕩けた瞳を細めて私を見つめる。
「あったかくて、やわっこいのう」
「……零の手はおっきくて、綺麗だね」
「お主が小さいんじゃよ」
「そうかなあ」
続けてマッサージをしていると、彼の手がぐるりと私の手を捕まえてしまった。
「ほれ、すっぽり入っちゃうぞい」
「ほんとだ」
「……えいっ」
「うわ、」
手を押さえつけて、突然零は私をソファに押し倒すようにのしかかってきた。見上げた彼は思っていたより寝癖がついていて、なんだか可愛かった。繋いでいないほうの手を伸ばして髪を撫でるけれど、手が離れるとすぐにぴょんと跳ねてしまう。
「ふふ、可愛い」
「……うむ、可愛いのう。陽射しがきらきら反射して、目が眩むくらいじゃ」
彼のまだ冷たい指先が私の髪に触れる。彼の黒檀のようなくせ毛も、光を浴びてきらきら光っていた。透き通った瞳孔にはやさしい愛情が隠れている。
「じゃあ、目、閉じていいよ」
その首に腕を回して引き寄せ、瞼とくちびるに順番にキスをした。
「……まだ昼なのはわかってるんじゃけど、今のはお主が悪くないかのう」
「あ、だめ。お昼ご飯まだ食べてないから」
「しくしく……生殺しじゃ〜」
彼が手のひらを私のデコルテに当てたから、パッとそれを振り払って笑った。お腹が空いてる状態でお昼からするのは嫌だ。彼は大人しく諦めて体を起こし、しくしくと泣き真似をしてみせる。
「何食べたい?」
「え? お主じゃけど」
「はいはい、それは後でね」
「言質は取ったぞい」
くだらない言葉を交わして、贅沢に過ぎていく時間を浪費する。陽射しだけが差し込む薄暗い部屋で、彼は幸せそうに笑っていた。
何にも特別なことがなくたって、穏やかな今はきっと一番満たされているに違いない。彼の微笑みを見ていると自然とそう思えた。