その手で
「……やっぱり、こういうのはよくないのではないかのう」
今更怖気付いたように、彼はそう言って私から手を離した。ドキドキと上がる心拍数が拍子抜けしたようにおさまっていく。私はなるべく鋭い目で睨むように彼の瞳を見た。
「寸止めされるのが一番嫌なんだけど」
「それはそうじゃろうけど……しかし、」
「零、さっきやるって言ったのに。男に二言はないんじゃないの」
「そうは言っても、なまえ。お主のことが大事なんじゃよ」
申し訳なさそうに眉尻を下げて、彼は叱られた子犬みたいに体を小さくする。そうされるとなんだか怒るに怒れなくて、行き場のなくなったもやもやを溜め息と一緒に吐き出した。
「でも準備もちゃんとしたし、滅多なことはないと思うよ。零は初めてのとき、どうだったの?」
「うむ……血がいっぱい出たのじゃ」
「こわっ……え、痛かった?」
「それなりに」
事前に調べていたところによれば、きちんと入念に準備さえすれば痛くない……と聞きかじったので安心していたのに。しかしここで怖気付いたらもう二度と出来ないような気がした。ただでさえこれまで怖いから痛そうだからと逃げ続けていたのを、やっと今夜決心ができたというのに。
「痛くてもいいよ、血とか出ても、死なないと思うし……いいから、零にしてほしい」
「う……っそう言われると断れないんじゃけど……」
「うん、お願い」
まっすぐ目を見てお願いすれば、零は断らない。彼は観念したようにごくりと喉仏を上下させて、私の頬に手を添えた。私は緊張しながら目を閉じて、きゅっとくちびるを噛みしめる。
「……」
すぐそばで零の震える吐息が聞こえた。耳に冷たい感触がする。恐る恐る薄目を開けて様子を窺おうとすると、優しいキスで阻まれた。
そしてようやく、バチン! と耳もとでピアッサーの音がしたのだった。
===
リクエストありがとうございました!
今更怖気付いたように、彼はそう言って私から手を離した。ドキドキと上がる心拍数が拍子抜けしたようにおさまっていく。私はなるべく鋭い目で睨むように彼の瞳を見た。
「寸止めされるのが一番嫌なんだけど」
「それはそうじゃろうけど……しかし、」
「零、さっきやるって言ったのに。男に二言はないんじゃないの」
「そうは言っても、なまえ。お主のことが大事なんじゃよ」
申し訳なさそうに眉尻を下げて、彼は叱られた子犬みたいに体を小さくする。そうされるとなんだか怒るに怒れなくて、行き場のなくなったもやもやを溜め息と一緒に吐き出した。
「でも準備もちゃんとしたし、滅多なことはないと思うよ。零は初めてのとき、どうだったの?」
「うむ……血がいっぱい出たのじゃ」
「こわっ……え、痛かった?」
「それなりに」
事前に調べていたところによれば、きちんと入念に準備さえすれば痛くない……と聞きかじったので安心していたのに。しかしここで怖気付いたらもう二度と出来ないような気がした。ただでさえこれまで怖いから痛そうだからと逃げ続けていたのを、やっと今夜決心ができたというのに。
「痛くてもいいよ、血とか出ても、死なないと思うし……いいから、零にしてほしい」
「う……っそう言われると断れないんじゃけど……」
「うん、お願い」
まっすぐ目を見てお願いすれば、零は断らない。彼は観念したようにごくりと喉仏を上下させて、私の頬に手を添えた。私は緊張しながら目を閉じて、きゅっとくちびるを噛みしめる。
「……」
すぐそばで零の震える吐息が聞こえた。耳に冷たい感触がする。恐る恐る薄目を開けて様子を窺おうとすると、優しいキスで阻まれた。
そしてようやく、バチン! と耳もとでピアッサーの音がしたのだった。
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リクエストありがとうございました!