「ほれ」
 夕方、帰ってきた零は突然小さな紙袋を渡してきた。
「ん、何? あっちょっと、」

渡すだけ渡して、彼はすたすたと自室に戻ってしまった。何を照れているんだと笑いつつ、紙袋を開ける。中には綺麗にラッピングされた小さな箱が入っていた。リボンをほどいて箱を開ければ、中から綺麗な紅色の石がついたピアスが出てきた。

「……あれ? これ……ねぇ、零! 零〜?」

ピアスを持って立ち上がり、零の部屋をノックする。返事がないので勝手にドアを開けて中に入った。すると、ベッドのうえで丸くなった零がこちらを見て拗ねたように唇を尖らせた。

「入っていいとは言っておらんのじゃけど」
「ダメとも言ってないじゃん」
「屁理屈じゃ」
「それより、これ。零のしてるやつとお揃いだよね? わざわざ買ってきてくれたの?」

 彼のベッドの縁に腰掛けてピアスを見せると、彼はこくんと頷いた。そして私の手からピアスを取り、私の隣に座り直す。

「せっかく開けたんじゃから、お揃いのが良いと思っての」
「ふふ、ありがとね。でもなんでそんな照れてるの?」
「…………薫くんに……それちょっと重くない? と言われてしまって……」
「あはは、零が重いのなんて今更なのに。大丈夫、嬉しいよ」

私が軽く笑ってそう言うと、彼は私の耳にピアスをつけてから少しショックそうな顔で私を見た。無自覚のようだけど、実際彼はかなり重いひとだと思う。

すぐ拗ねるし、他の男の人と話してるとあからさまに牽制するし。重いというか、加減がわからない不器用なひとなのだ。弟の凛月くんに対してもそう。

「我輩めんどくさいの……?」
「めんどくさいよ。でもめんどくさいところも含めて大好きだから、問題ないかな」
「うぅ、男前じゃ〜」
「ていうかプレゼントは何だって嬉しいよ、本当に。お揃いも嬉しい」

 耳についたピアスを指先で触れて笑うと、零も安心したように微笑んだ。それから彼はぎゅうっと私に抱き着き、猫ちゃんみたいに擦り寄ってきた。ふわふわの髪が首すじをくすぐる。

「よしよし、良い子良い子。ありがとう、大好きだよ」
「うむ。毎日付けておくれ」
「はいはい」

 彼の頭を優しく撫でて、つむじにキスをする。きっと毎日、ピアスに触れるたびこの可愛い温もりを思い出すんだろう。

でもそうなると、せっかくピアスを開けたのに新しいピアスを買う気にならないかもなぁ……なんて。