ひらひら視界をチラつくレモンイエローが鬱陶しかった。大きな麦わら帽子とエンジェルフィッシュみたいな丈の長いワンピース、それから、半袖から伸びる白い腕。どれをとっても綺麗だった。

「茨、」

彼女は夏風にワンピースの裾を揺らしながら、快活に笑って向日葵のそばに駆け寄った。風鈴みたいな透明な声色が俺の名前を呼ぶ。

「見て、ヒマワリ。なんか思ってたよりおっきいね」
「近くで見るとグロいですね」
「グロくはないでしょ、綺麗だよ」
「そうですかね」

 彼女と同じくらいの背丈の、大きな向日葵だった。花は彼女と同じかそれより大きいくらいだ。彼女が向日葵を物珍しそうにまじまじと観察するのを、俺は隣でじっと見つめていた。大きくゆるい三つ編みにした髪が、彼女の動きに合わせてゆらゆら揺れている。

 そういえばどこかで、男は動くものをつい目で追ってしまうと耳にしたことがあるような、ないような……茹だるような暑さでいまいち思考がまとまらない。俺が彼女を穴が空くほど見つめていると、不意に彼女が俺を見た。

「ヒマワリの花言葉、知ってる?」
「……知りません」
「私はあなただけを見つめる、なんだって」
「へ〜え」

向日葵なんて一瞥もしないまま、彼女の頬にはりつく横髪と、滴る一筋の汗を見つめる。彼女は照れたように笑って、俺の胸もとを軽く押した。

「もう、見すぎ。ヒマワリもドン引きするレベルだよ」
「…………見てませんが?」
「それはさすがに無理があるでしょ」

 言われてやっと、自分がかなり熱い視線を彼女に向けていたことに気付いた。今さら目を逸らしても無駄だった。

「あはは、真っ赤」
「うるせー……」

目を逸らそうとしても、見ないようにしても、やっぱり気がついたら彼女を見つめてしまっている。でも別に彼女が綺麗だからとか、彼女を好きだからとか、そんな浮ついたバカみたいな理由なんかじゃない。

……そう、ただ、ちらちら揺れるスカートを目で追ってしまうだけだ。