「……何してんですか」

 お気に入りのブランケットを羽織ったまま、彼はもそもそとリビングへやってきた。眠たげな顔のまま、ふらふらと私の背後に腰を下ろして後ろから腕を回す。私の肩に顎を乗せると、彼は私の手元のタブレットを覗き込んだ。

「暇だからお絵描きしてたの。可愛いでしょ」
「わぁ……ゆるキャラっぽい……♪ もっと描いてください」
「良いよ〜、どんなのがいい?」
「えぇと、じゃあイチゴの……」

 子どものように無邪気に喜びながら、彼はいくつかリクエストをしてきた。ゆるキャラみたいな簡単なイラストだけど、描きあげるたびに彼がはしゃぐものだからついついたくさん描いてしまう。

「名前もつけましょうよ。このイチゴちゃんはなんて名前なんですか?」
「え? ……イチゴちゃんじゃだめかな?」
「え〜〜〜……まぁそれでも可愛いですけど……じゃあこのキウイくんは?」
「ん〜……キウイくん?」

 名前なんて思いつかないので、翠くんの呼び方を繰り返すだけになってしまう。でも彼は相変わらず楽しげに、くすくす笑いとばしてくれた。

「あははっ、ネーミングセンスないですね、俺ら」
「ふふ、子どもができたら困るね」
「……そうですね。周りの人にも沢山相談しないと」

 充電も少なくなったタブレットの電源を落として、机に置く。それからお腹に回された彼の腕に触れ、肩に置かれたままの頭を軽く撫でた。すると不意に、ぐぅ、と彼のお腹が空腹を訴えた。

「お腹すいちゃった? パンでも焼く?」
「ん……はい。あ、でもなんか……フルーツのゆるキャラばっかり描いてもらったから、甘いものも食べたいかも」
「あ、ちょうど良かった。昨日スーパーで苺衝動買いしたんだよね、パン食べてからそれも食べよっか」
「やった」

 嬉しそうに笑う翠くんがあんまり可愛くて、ついじゃれるようにその頬にくちびるを寄せる。一瞬驚いたような顔をしたあと、彼はちょっと不満げに眉を寄せた。

「そういうのは口にしてください、なんかガキ扱いされてるみたいで嫌だ……あ、いや、嫌ではないですけど……」
「あはは、ごめんごめん」

改めて唇にキスをすると、彼はほんのり頬を赤くして満足そうに笑った。可愛いなぁ、なんて口にするとまた機嫌を損ねそうなので黙って頭を撫でる。

こういうなんでもないような時間こそ、一番甘くて幸せなんだろうなぁ。恥ずかしいからわざわざ言葉にはしないけれど。