「良いなあ……」

 ぽつりと呟く彼女の視線の先には、先日ESのシャッフルユニットで企画されていたブライダルの記事が載った雑誌があった。

「……やはり憧れますか?」
「わあっ!? あっ、いや、えっと……!」

彼女の腰掛けるソファに腰を下ろし、ココアとコーヒーをいれたマグカップをテーブルに置く。彼女は慌てて雑誌を閉じてテーブルの隅にやってしまった。じ、と挙動不審な彼女を見つめると、彼女は照れるようにそろそろと視線を逸らす。

「……結婚にはそこまで憧れないんだけど、もしこの、プロポーズの言葉をHiMERUくんが言うとしたらなんて言うのかな〜とか思っちゃって。あっそうだ、フリで良いからやってみてよ」

 無邪気に笑ってそんなことを言い出した彼女は、きらきらと目を輝かせ俺を見た。数秒考えてから、ため息をついて彼女の肩に手を置く。

「やりません。……俺が貴女にプロポーズするときは、本気の一回きりですから。聞き逃さないよう、しっかり傍で耳を澄ませていてくださいね」

 彼女の横髪をさらりと耳にかけて、そっと唇を寄せる。彼女はみるみるうちに可哀想なほど真っ赤になり、とうとう消え入りそうな声で「はい」と頷いた。

この調子ではプロポーズなんてしたら気絶してしまうのではないだろうか。少し心配ではあるけれど、今のうちにゆっくり心の準備をしてもらおう。