太陽が肌をやく感覚とは少し違った。心臓がドンドンと大きな音で私を追い立てている。肌がじわりと冷や汗に濡れる。目の前の彼女が怯えたような視線で私を見つめているのに気付いて、はっと我にかえった。

「あ……ごめんね、私……」

 彼女の細い腕を、あとが残るほど強く掴んでしまっていた。手を離して後退り、言葉に詰まる。

「……どうしちゃったんだろう……なんだか胸がざわざわする」

 久しぶりの休日、二人きりで出かけようって決めて、待ち合わせ場所に来るまでは羽が生えたみたいに軽い足取りだったのに。先に来ていた彼女が知らない人に話しかけられているのを見た瞬間、胸の奥がかあっと熱くなるのを感じた。

幸い、私が何か言う前に見知らぬ人はそそくさとどこかへ行ってくれたけれど、それでも私の胸に立つ荒波はおさまってくれなかった。

「びっくりした、凪砂くんもやきもちとかやくんだね」
「……やきもち? 私いま、やきもちをやいていたの?」
「あ、ううん、違ったならごめん。さっき変な人に話しかけられてたから、不安になっちゃったのかなと思って」

 彼女に言われて自分の胸に手を当ててみる。やきもち……嫉妬、不安。確かにそういう感情のような気がする。本で嫉妬にかられる人の描写を読んだことがあるけれど、実際にはこんなふうなんだ。

 胸にある感情の正体がわかると、自然と気持ちを落ち着かせることができた。一度深く呼吸をして、改めて彼女に向き直る。

「うん。私、君が他の人に触られたり話しかけられたりしているのが嫌だったみたい。できることなら君を狭い部屋に閉じ込めて私だけのものにしてしまいたい……こういうのは多分、あんまり良くないこと、なんだよね」

 かつての父のように。彼女を世界から切り離して、思う存分愛を注げるのならきっと、こんなふうに胸がざわめくこともない。けれど、彼女はしばらく考え込んだあと、ちょっと困ったように笑った。

「そうだね、申し訳ないけど、閉じ込められてあげられないかな。でも私から凪砂くんの傍を離れることはないから安心してほしいな」
「……うん。君を信じるよ」

 私よりも小さくて柔らかい手を優しく包み込み、まっすぐ目を合わせる。彼女は春の太陽みたいに微笑んで私の心をじんわりと温めてくれた。

まだまだわからないことばかりだけど、こうして彼女が見つめてくれるかぎりは、不安になることなんてひとつもあるはずがないんだろう。