学院からの帰り、電車の中でふと同じ制服の奴を見つけた。あんずに続いて、二人目の試験的プロデュース科生徒だ。確か名前は……なまえだったか。最近はよくあんずと一緒に俺達をプロデュースしたり衣装を作ったりしている。

人形みて〜な面して、いつもニコニコ笑ってる。愛想がいいって言うのか、警戒心が強いって言うのか、どっちもしっくりこねぇけど。

次の駅で人が入ってくると、ドア側に立っていたなまえのすぐ後ろに、中年のサラリーマンが立つ。何でそんなピッタリ後ろなんだよ、と少し気にしていると、案の定オッサンの手がなまえに触れた。止めさせようと立ち上がった瞬間、ドン!と大きな音が車内に響く。

「汚ぇ手で触んなよ、オッサン」

さらりと綺麗な黒髪が流れる。なまえが痴漢のオッサンを投げ飛ばしたらしい。軽々と成人男性を倒してしまう様子は、今までのなまえからは想像出来ないくらい、カッコイイ。

「……あっ、大神先輩……」

俺に気付くと、なまえはしまったという顔をしてばつの悪そうな笑顔を浮かべる。柔らかそうな白い頬は赤く染っていた。

「だ、大丈夫かよ」
「えぇ、はい……」
「おいオッサン、俺もしっかり見てたからな。次の駅で出頭してもらうぜ」

なまえを退かせて代わりに俺がオッサンを押さえつけ、次の駅で駅員に引き渡した。ホームで電車を待っている間、なまえは俺から目を逸らして黙りこくっていた。

「あのよぉ」
「は、はい」
「……あんなカッコイイのに、なんで普段猫被ってンだよ」

もごもごと思ったことを素直に聞くと、なまえは驚いたように目を見開いて俺を見た。これも見たことない顔だ。

「男の人って、優位に立たせた方が言うことを聞くので……。というか、幻滅したでしょう。可憐な女の子と思っていたら、あんな……うぅ、お恥ずかしい……」
「お、俺はカッコイイほうが良いと思うぜ!大体、あんずだってああ見えて頑固っつーか強いっつーか、その……だから、折角プロデューサーなんだったら、素のままで接したほうが良いんじゃねぇの」

なんとなく上手くまとまらないままそう言ってみると、なまえは気が抜けたようにふにゃりと笑ってみせる。あ、また、初めて見る顔。

「そうですね。……全員にいきなりは無理でも、大神先輩には、繕わないでおきます」
「……おう、別に敬語じゃなくても良いからな」
「世間体があるのでそれは善処します」
「……おう」

なんとなく寂しく思いながら、きっぱり断る姿勢には少しグッときた。つ〜かさっきからなんで、俺の心臓はこんなにバクバクしてんだよ。……意味わかんねぇ。