そういえば先日、ジュンが殿下と何やら猫の写真を見ていたような。確か、自宅でパソコン作業をする際、飼い猫がやって来てキーボードの上に寝転び邪魔をしてくるのが可愛い……というふうな写真だった。

「硬い」
「それは申し訳ありません。ご不満なら退いてください」
「やだ」

 いくら可愛くても、さあ仕事をしようとパソコンを開いたときに膝に頭を乗せて来られると流石に邪魔だ。何を思ったのか、無言で自分の硬い太ももの上に頭を乗せてきた彼女を見下ろし、隠すことなく溜め息をつく。

「仕事がまったくできないわけではありませんが、普通に気が散ります……向こうで大人しくしていてもらえませんかね」
「え〜」
「えー、ではなくて。急ぎなんですよ、これ」
「まあ、休日にやるくらいなんだからそうなんだろうね」

 彼女は少し唇を尖らせ、声色こそ意図的にやわらかくしているようだが、やや不満げに指先で自分の脇腹をつついた。ぐしゃぐしゃと片手で乱雑に頭を撫でると、彼女は猫のような嫌そうな声を出す。

「ぎゃー、やめてっ」
「こっちの台詞です」
「なんで、大人しくしてるもん!」
「あんたがそこにいたら仕事どころじゃなくなるっつってんですよ!」

 はっ、と口もとを抑えたときにはもう遅かった。眉間に皺を寄せて誤魔化すようにまた彼女の髪をぐしゃぐしゃに撫でまわす。

「お昼までには終わらせて約束通りランチはご一緒しますから、向こうで待っててください」
「……はぁい」
「まったく……」

彼女はあっさり体を起こし、乱れた髪を手ぐしで整え立ち上がった。それから自分の背後に回り、つむじにやさしく唇を当てると、上機嫌そうに笑って部屋を出て行った。

「……はあ」

 残された部屋で一人、俺は肘をついて頭を抱え、今日一番の溜め息をこぼした。