初夏、高く青い空が広く続き、眩い太陽はじりじりと地表を焼いている。まだ夏真っ盛りではないにせよ、都会のコンクリートがもつ熱はばかにできない。

 汗ばむ気温の一方、空調の効いた涼しい店内で、ふたりは向かい合って座っていた。

「……くぅ、っ美味しい……!」

やや大きめのかき氷がふたつ、それぞれふたりの目の前に置かれている。なまえは細長いスプーンでひと口かき氷を食べると、やや大袈裟に感動してみせた。そんな無邪気な様子を眺めつつ、こはくは静かに微笑みを浮かべる。

「なんや、えらい美味しそうやね。わしも同じ味のにしたほうが良かったやろか?」
「そっち、美味しくないの?」
「ううん、ちゃんと美味しいで」
「なら違う味のほうが良いよ。ほら、交換できるでしょ」

 なまえはそう言ってスプーンにかき氷を乗せ、あーん、とこはくのほうへ差し出した。彼は一瞬迷ったが、変に照れてしまうのも格好がつかないからと口を開けた。

「どう? 美味しい?」
「……うん。ほんならわしのも食うか?」
「うん!」

 多分この人は何にも考えてないんやね、と心の中で自分を落ち着かせ、彼は彼女と同じようにスプーンでかき氷をすくった。ぎこちなくならないよう気を張りつつ、彼女の小さな口にかき氷を運ぶ。

「ん〜っ、おいひい」
「さよけ」
「あ、でも……」
「うん?」

彼女はふと自分の口を抑えて、目線を逸らしはにかみ笑いながらもじもじと声を出した。

「あの……間接キスみたいになっちゃった、ね」
「……せやね。嫌やった?」
「ううんっ、嫌じゃない! あっいやその、」

 まるで狙ってやったみたいに思われるのが恥ずかしくなって、けれど一方で気にしすぎて変に思われるのも怖くて、彼女はもごもごと言葉を濁した。そんないじらしい様子を見て、こはくは思わずふきだしてしまった。

「コッコッコッ、なまえはんは可愛らしいお人やね、ほんまに」
「か……わいくはないけど、別に」
「可愛ぇよ、いちごみたいに真っ赤になってもうて」
「も〜……」

 抗議の言葉さえ失って、彼女は熱くなった頬を両手で包む。こはくは少し身を乗り出すと、彼女のくちびるにそっと親指の腹で触れた。彼女は驚いて思わず目を瞑ってしまったが、彼は単に彼女のくちびるの端についたシロップを拭いてやろうとしただけだった。

 が、こはくは咄嗟にちらと周りを見、誰も見ていないことを確認してから、目を閉じた彼女のくちびるに一瞬キスをした。

「……うん、甘くて美味しいわ」

してやったりと満足気に笑うこはくを、彼女は満更でもないような、しかし少し悔しげな目でジッと見つめる。実際のところ、彼女に負けず劣らずこはくの胸もいつもより速く脈打っていたのだが、彼女がそれを知る由もない。

 お互い甘い空気にどぎまぎしながら、その後は溶けてしまわないようにと会話も少ないままかき氷を完食した。