「え?」
「……っだから、何回言わせたら気が済むわけぇ!? 俺一回しか言わないからって最初に言ったよね!?」
「ご、ごめんなさい、びっくりしちゃって」
「ったく……で? 返事は」

 ついつい、クセでぶっきらぼうな口調になってしまった。思えば人生で初めて告白をしたけど、やっぱりドラマの台本みたいには上手くいかないもんだ。

でも、目の前でほんのり頬を赤くしながら言葉に迷う彼女を見て、ちょっと期待に胸を高鳴らせた。即答でごめんなさいって言われなかったんだから脈はあるでしょ、なんて。

「え……と、その、嬉しいです、泉くんみたいにかっこよくて綺麗な人にそんなふうに言ってもらえて……でも、ごめんなさい。私は泉くんの隣に立てるほど綺麗じゃないから……」
「はあ?」

淡い期待をすぐに壊され、挙句そんな自虐みたいなことを言われてショックを受けるより先に腹が立った。

 ごくんと唾を飲み込んでから、咎めるように少し低い声で彼女を軽く睨む。

「いや、俺のことが嫌なら素直にそう言えばいいでしょ。わざわざ自虐されると俺の見る目がないって言われてるみたいだし同情されてるみたいでムカつくんだけど」
「や、ちがうの、本当に。あの……見て」

そう言って突然上着を脱いだ彼女は、俺に近づいてその腕を見せてきた。肩から二の腕にかけて、白い肌を上から塗りつぶすみたいに大きな火傷のあとがある。

 確かに思い返せば、夏のクソ暑い日にも彼女はずっと肌を見せようとはしなかった。暑いとは言いつつ毎日きまって上着を羽織っていた。……でもだから何だって言うわけ。

「ここだけじゃないの、背中にもあって……気持ち悪いでしょ、こんなの」
「……確かに俺はあんたの顔も体も、まぁ、その……可愛い、と思うけど。あんたが自分をどう思ってるかと俺があんたを好きなことって関係なくない? あんたがどれだけその傷にコンプレックス抱いてるか知らないけど、俺は正直そんなのどうでもいいし、その傷があってもなくてもあんたのことは誰にも渡したくないんだけど。……それで、もう一回だけ聞いてあげるけど、返事は」

必死すぎてダサい、とは自分でも思ったけど、それでも断る理由には納得できなかった。細っこい手首を握って真正面から目を見て話すと、彼女は涙ぐんで、とうとうこくんと頷いた。

「うん、私もほんとは、泉くんのこと好き……」
「なら最初からそう言いなよねぇ」
「うん……」

 泣き出してしまった彼女を抱き寄せ、柔らかな髪を軽く撫でる。

確かに「人間は中身」なんて夢の見すぎだと思う。でもこんな傷があったところでそうそう俺の気持ちは変わらないし、多分そういうモンなんじゃないの、愛って。……わざわざ言ったりしないけど。