Call me by my name!
「漣くん」
「……いい加減下の名前で呼んでくださいよォ、よそよそしすぎンでしょ……」
トレーニングルームでひとり筋トレに耽っていると、聞きなれた声に苗字を呼ばれる。
彼女は夢ノ咲を参考に、プロデュース科を試験的に設けた玲明学園にやってきた転校生だ。大人しくて他人行儀の割に、仕事に関しては人一倍情熱的だ。
どういう訳か茨に気に入られているらしく、Edenのプロデュースを補助していたりする。と言っても、大抵は茨の目の届かないEveの世話だが。
「あまり親しげなのも良くないって……あんず先輩もプロデューサーって呼ばれているみたいですし……」
「そういう適当な言い訳しねぇでくださいよ、おひいさんのことは日和くんって呼んでるでしょ、アンタ」
「それは日和くんが呼ばないとクビにするって言うから……」
「言いそうですけど……じゃあ俺のことも、ジュンって呼ばねぇならクビにしちまいますよ」
なぁんて、と笑いながらそう言うと、彼女はきょとんとした顔をしてからくすりと笑った。
「どうしてそんなに名前で呼んで欲しいんですか?」
「……べ、つに、他意はねぇっすよ、なんか……俺のことだけ嫌いみてぇだなって……。なんだかんだ、ナギ先輩のことは凪砂さんって呼んでるし、茨のことは茨さんって呼んでるでしょ」
「確かに。……でも、漣くんの名字、綺麗で好きなんです。爽やかで、綺麗で、漣くんにぴったりだなって」
「それは……あー、嬉しいっすけど……やっぱり名前で呼んで欲しいっすよ」
なんとなく照れながらそう頼み込めば、彼女は腕をくんで少し考えたあと、ちいさく、喉をふるわせる。
「…………ジュンくん」
頬を赤くしながら上目遣いで名前を呼ばれて、思わず心臓が跳ねる。ドッドッドッと速くなる鼓動に戸惑いながら、赤くなった顔を見られたくなくてそっぽを向いた。
「……俺もなまえって呼びますから」
「えっ、ダメです!」
「なんっ……でですか!!」
「だって、そんな……呼ばれる度こんなになってたら、身が持たない、ので……」
彼女のほうを見ると、耳まで真っ赤にして、恥ずかしそうに両手で顔を隠していた。その様子があんまり可愛くて、つい、力尽くでその手をどかし距離を詰める。視線をしっかり合わせて、緊張しながら平気なフリをしてみせた。
「じゃあ、慣れるまで呼びますよ。アンタも呼んでください」
「……む、むり……」
「無理じゃねぇ」
あ、キスできそう、と頬に手を添えると、勢いよくドアが開いた。驚いて振り返ると、何故か茨が入り口に立っている。
「ジュン、プロデューサーに手を出さないでくださいね!」
「監視カメラでもついてんのかよ……」
内心かなり焦りながらも、なんとか平静を装う。茨は仕事だとかなんとか言って、なまえを連れてさっさとどこかへ行ってしまった。
……ほっぺたふにふにだったな、とかどうでもいいことを思い返して、ひとり残されたトレーニングルームで、もう一度彼女の「ジュンくん」が聞きたくなった。
「……いい加減下の名前で呼んでくださいよォ、よそよそしすぎンでしょ……」
トレーニングルームでひとり筋トレに耽っていると、聞きなれた声に苗字を呼ばれる。
彼女は夢ノ咲を参考に、プロデュース科を試験的に設けた玲明学園にやってきた転校生だ。大人しくて他人行儀の割に、仕事に関しては人一倍情熱的だ。
どういう訳か茨に気に入られているらしく、Edenのプロデュースを補助していたりする。と言っても、大抵は茨の目の届かないEveの世話だが。
「あまり親しげなのも良くないって……あんず先輩もプロデューサーって呼ばれているみたいですし……」
「そういう適当な言い訳しねぇでくださいよ、おひいさんのことは日和くんって呼んでるでしょ、アンタ」
「それは日和くんが呼ばないとクビにするって言うから……」
「言いそうですけど……じゃあ俺のことも、ジュンって呼ばねぇならクビにしちまいますよ」
なぁんて、と笑いながらそう言うと、彼女はきょとんとした顔をしてからくすりと笑った。
「どうしてそんなに名前で呼んで欲しいんですか?」
「……べ、つに、他意はねぇっすよ、なんか……俺のことだけ嫌いみてぇだなって……。なんだかんだ、ナギ先輩のことは凪砂さんって呼んでるし、茨のことは茨さんって呼んでるでしょ」
「確かに。……でも、漣くんの名字、綺麗で好きなんです。爽やかで、綺麗で、漣くんにぴったりだなって」
「それは……あー、嬉しいっすけど……やっぱり名前で呼んで欲しいっすよ」
なんとなく照れながらそう頼み込めば、彼女は腕をくんで少し考えたあと、ちいさく、喉をふるわせる。
「…………ジュンくん」
頬を赤くしながら上目遣いで名前を呼ばれて、思わず心臓が跳ねる。ドッドッドッと速くなる鼓動に戸惑いながら、赤くなった顔を見られたくなくてそっぽを向いた。
「……俺もなまえって呼びますから」
「えっ、ダメです!」
「なんっ……でですか!!」
「だって、そんな……呼ばれる度こんなになってたら、身が持たない、ので……」
彼女のほうを見ると、耳まで真っ赤にして、恥ずかしそうに両手で顔を隠していた。その様子があんまり可愛くて、つい、力尽くでその手をどかし距離を詰める。視線をしっかり合わせて、緊張しながら平気なフリをしてみせた。
「じゃあ、慣れるまで呼びますよ。アンタも呼んでください」
「……む、むり……」
「無理じゃねぇ」
あ、キスできそう、と頬に手を添えると、勢いよくドアが開いた。驚いて振り返ると、何故か茨が入り口に立っている。
「ジュン、プロデューサーに手を出さないでくださいね!」
「監視カメラでもついてんのかよ……」
内心かなり焦りながらも、なんとか平静を装う。茨は仕事だとかなんとか言って、なまえを連れてさっさとどこかへ行ってしまった。
……ほっぺたふにふにだったな、とかどうでもいいことを思い返して、ひとり残されたトレーニングルームで、もう一度彼女の「ジュンくん」が聞きたくなった。